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原爆の図 丸木美術館

2022年01月28日 09:26 論説・コラム 春・夏・秋・冬

埼玉県東松山市に「原爆の図 丸木美術館」がある。丸木位里さん、丸木俊さん夫妻が1967年に開館させた。美術館の名にあるように何よりも15部からなる「原爆の図」が有名だ。広島に原爆が落とされた数日後に夫妻でかけつけその惨状を目撃した。

春夏秋冬▼丸木美術館には過去、2回訪れたことがある。1度目は36年前で、丸木俊さんのインタビューのためである。2度目は9年前。「原爆の図」の第14部は「からす」(72年)というタイトルで、植民地時代、広島で被爆した朝鮮人を描写したものだ。それを取材するために訪ねた。被爆し亡くなった朝鮮人の死骸は放置され、それをカラスがむしばんでいる姿が描かれている。

▼「からす」には「屍にまで差別を受けた韓国・朝鮮人。屍にまで差別した日本人」という説明がつけられている。その差別は解放から77年が経っても日本社会の中にいまもなお続いている。

▼丸木俊さんはインタビューのなかで日本の再侵略の動きを警戒しながら「今ちょうど戦後40年でしょ。日本は豊かになったといわれますが、この40年間、なにかがじっと潜んでいて、すきをうかがってきたんじゃないかと思います」と語っている。

▼丸木さんが言う、「潜んできたなにか」は、36年が経ったいま、さらに日本社会で大手を振って堂々と正体を現しているのではないか。「からす」以外の「原爆の図」もぜひ見てもらいたい。丸木美術館を一度訪ねてみてはいかがか。(徹)

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