〈朝鮮経済 復興のための革新 7〉不合理な体系・秩序の刷新
2021年09月01日 12:34 主要ニュース 経済21世紀型自立経済のための整備補強
朝鮮経済復興に向けた革新の方法論は、「内なるパワーを絶えず増大させること」である。(連載2参照)今、国内で「人民経済の整備補強」と呼ばれているプロセスがまさにそれだ。
部分的ではなく全面的に
「不合理な経済事業体系と秩序を整備補強するための事業が適切に推進されなかった」 - 朝鮮労働党第7回大会(2016.5)で示された国家経済発展5カ年戦略の遂行目標が未達に終わった原因に対する党中央委員会的な分析の一部だ。
今日の経済復興戦略は、過去の教訓から出発している。新たな国家経済発展5カ年計画を示した党第8回大会(2021.1)は、「現段階で労働党の経済戦略は整備戦略、補強戦略である」と明かした。戦略の目的は、経済事業体系と部門間の有機的連携を回復整備し、自立的基盤を固めるための事業を推進して朝鮮経済をいかなる外部的影響にも揺らぐことなく円滑に運営される正常軌道に乗せることにあるとされている。
社会主義経済は、すべての部門が不可分離に連なった集団経済である。そして自立的な経済構造とは、国内の物質的需要を国内生産によって満たすことができる経済構造だ。その特徴は、国家経済をなす部門構造の多面性・総合性が保たれ、生産に必要な原料・燃料・設備が国内で確保されるところにある。朝鮮では労働党の自立的民族経済建設路線に沿って、そのような経済構造が築かれてきた。
ところが、経済建設の過程にはその能力が早いスピードで向上する部門や単位があり、そうでないものもある。結果、それらの均衡関係は絶えず変化する。既存の事業体系や秩序が変化した条件と環境に適合していない場合もある。連鎖的な循環の輪をなす部門と単位の間に不均衡が生じ、事業体系と秩序が現実に合致しなくなれば、生産と消費の連携が適切に実現されず、結果的に経済を円滑に運営することができない。5カ年戦略の遂行目標が未達に終わった原因の一つがまさにそれだった。
頻繁に生じる不均衡を正す部分的な整備補強は元来、日常的に行われるべきだ。ところが、党第8回大会で強調されたのは、経済全般の整備補強だ。国家経済を新たな発展段階に引き上げるために、すべての部門と単位を対象に全面的な整理整頓事業を進めることが求められた。一部の生産工程や設備だけでなく、国家レベルで経済事業体系と部門間の有機的連携を回復・復旧させる、そして新たな高みで「連帯的革新」を成し遂げるということだ。その作業は膨大なものになる。それは一朝一夕では実現せず、一定の期間にわたって段階的に推し進められる戦略的な事業だ。
経済行政の革新、生産力の再編成
「人民経済の整備補強」では、事業推進のプロセスを正しく設定することが重要となる。国内では、全面的な整備補強で先行されるべき課題は「経済事業に対する指導管理の体系・方法の改善」とされている。経済管理が社会主義の原則に沿い、客観的な経済法則と変化する現実に合致してこそ、資金と労力、原料や資材の問題を円満に解決できる。このような観点から党第8回大会を起点として、経済事業と関連した問題を内閣に集中させ、内閣の主導的役割を強化するための対策がとられる一方、経済管理機構をその事業内容と機能に合わせて再編成する作業も進められている。不合理な体系・秩序をなくし、新たに組み替える「経済行政の革新」だ。
社会主義計画経済において事業体系と秩序を改善するというとき、カギとなるのは「計画化事業の革新」だ。経済事業の客観的条件や生産の可能性、潜在力に対する科学的な試算に基づいて現実的な計画を作成、示達するためには経済数値の把握、すなわち「統計」の機能と役割を高めなければならない。統計システムがしっかりと機能してこそ、内閣は国内の経済事情をあまねく把握したうえで、経済連携のぜい弱な部分を探し出し、経済管理を改善するための正しい方策も立てることができる。
党第8回大会で示された課題の一つに「国家レベルで一元化された統計システムの強化」がある。今後、内閣は強化された統計システムに基づいて、金属・化学・電力など経済の基盤を成し、生産の最初の工程に位置する部門を整備補強する事業を優先的に組織執行し、全国で行われている生産と建設に不可欠な燃料、原料、資材、輸送などの条件を整えていくことになる。同時に輸入原料、燃料に基づく生産工程を国内の原料、資源に基づいた生産工程に移行し、経済的実利が保障されない工場や工程を整理し、その過程で確保した設備、材料を新たな生産工程や建設対象に利用する事業も進めていくだろう。国の資源分布と生産技術の連関、輸送条件などを綿密に試算して最良化、最適化の見地から生産力を合理的に再配置する事業も年次計画に沿って実行していくと見られる。
企業ごとに生産工程補強
「人民経済の整備補強」は、国家の経済司令部である内閣の使命であると同時に企業単位で実行される課題でもある。
例えば新たな5カ年計画期間、金属工業とともに最重視されている化学工業部門でも現存する生産工程の整備補強が提起されている。化学工業の構造を国内原料に基づく工業へと転換し、すべての生産工程を電力・労力・資源節約型、環境保護型に改造するための段階別目標を企業ごとに立てている。
これまでいくつかの化学工場では、少なからぬ労力と資材、資金を投じて整備補強を進めたが、生産過程に不都合な点が露呈し、数年経つと現実の要求に応えられなくなる現象があった。行政指導機関である化学工業省の官僚と工場経営陣の「戦略的見識の不足」が原因とされた。
党第8回大会以降は、過去の教訓から出発し、準備万端で整備補強事業を意欲的に進めている企業がメディアで紹介されている。例えば「肥料生産能力拡張工事が本格的に進められている興南肥料連合企業所では、過去にガス発生炉の運営で得た経験と教訓に基づいて工事の課題を実行」しており、「端川鉱業建設連合企業所をはじめとする施工業者と咸興化学設計研究所をはじめとする研究所との協力関係を結び科学技術的な試算を何度も繰り返しながら工程の建設を着実に推進」(労働新聞)しているという。
朝鮮の経済復興を望まない勢力は「人民経済の整備補強」 に関しても誤った偏見を流布している。その理由を「経済の失敗」「経済の低迷」と結びつけて論じ、制裁の有効性について力説している。
朝鮮では「人民経済の整備補強」をより高い目標に向けた前進と捉えている。
内閣をはじめとする国家の経済指導機関や企業が党大会の要求に応える整備補強の成果を収めるためには自らの潜在力を実利的に動員利用できるように目標を現実的に設定することが求められる。事業が膨大で複雑であるほど、内部の実態を冷静に解剖学的に分析し、それに基づいて関連するすべての部門、工程が均衡を保ちながら「連帯的革新」を成し遂げることができる最善の方法を探し、実行しなければならない。そうなれば5カ年計画の期間に経済分野で文字通りの革新が起きる。労働党が示した戦略が貫徹されれば、朝鮮には敵対勢力の制裁に打ち勝ち、いかなる外部的影響にも揺らがない21世紀型の自立経済構造が完備される。
(金志永)