〈学生支援緊急給付金問題〉国連・世界・日本政府に向けて制度是正訴える/朝大生が動画制作、公開
2021年08月08日 09:00 主要ニュース 民族教育動画拡散を呼びかけ
新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困窮する学生らを「救済」しようと、昨年5月に日本政府が創設した「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下「給付金」)。同「給付金」の対象から朝鮮大学校が除外されている問題と関連し、朝鮮大学校の学生たちが制度の是正を訴える動画を制作、インターネットで公開している。
6日に公開された動画は、「『学びの継続のための学生支援緊急給付金』からの除外に反対する朝鮮大学校学生のアピール」と題した約7分の映像で、現在同学に通う朝大生たちが朝鮮学校の歴史や進学した理由、大学生活などについて紹介する一方で、「給付金」からの除外という「コロナと民族差別の二重苦に見舞われた」自身らの痛切な心情や困難な状況を吐露している。
「ある友だちは休学を余儀なくされ、親も経済難に見舞われて自分でアルバイトもできずとても苦しいです。朝鮮人としてプライドを持って学びたいが、こんな状況で学業を続けるのは困難です」(動画「『学びの継続のための学生支援緊急給付金』からの除外に反対する朝鮮大学校学生のアピール」より一部引用)
これに先立ち、今年2月には国連人権理事会の特別報告者らが共同書簡を発表し、朝大を対象外とした日本政府の対応が「差別に相当」すると警告した。同書簡では、日本政府に対し、朝大生などマイノリティの学生たちが、継続的な学習を促進できるよう是正を強く求めたが、日本政府は「差別にあたらない」として何ら対応策をとっていない。
創設から1年以上が経過し、国内外からの批判が続いてもなお膠着状態にある朝鮮大学校をめぐる「給付金」問題―。
コロナパンデミックの長期化で、格差や差別など既に存在した社会課題が顕著となるばかりか一層深刻化するいま、日本政府は、あらゆる当事者の声に耳を傾けずに一体どのようにしてこの危機的状況を打開しようというのか。早急な対応策が求められている。
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公平で平等な教育権利の保障を求める朝大生たちの思いが込められた動画は、同学のホームページ、動画投稿サイト「ユーチューブ」チャンネル、フェイスブックページからそれぞれ視聴できる。学生たちは「映像を通じて現状を知ってほしい」と、この動画の拡散を広く呼び掛けている。
一方で動画は、後日予定されている院内集会を機に、国連人権理事会の特別報告者たちに対して送られる予定だ。
(韓賢珠)
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朝大生たちの思いが込められた動画「『学びの継続のための学生支援緊急給付金』からの除外に反対する朝鮮大学校学生のアピール」は、同学のホームページ、フェイスブックページ、動画投稿サイト「ユーチューブ」チャンネルからそれぞれ視聴できる。
【学生支援緊急給付金問題】
「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」は、昨年5月に新型コロナ関連支援策として日本政府が創設。感染症拡大の影響で経済的な困難を抱える学生向けに、最大20万円が給付される。しかし対象は、国公私立大学(大学院含む)・短大・高等専門学校・専門学校(日本語教育機関を含む)に通う学生に限定され、また留学生に対しては成績要件が設けられた。文科省は当初外国大学日本校を除外していたが、その後、国内外からの批判が集中すると、外国大学日本校8校に対し適用を拡大。しかし朝鮮大学校だけは「各種学校」を理由に除外し、その後も何ら追加措置をとっていない。(外国大学のうち、朝鮮大学校のように認可を得ているのは1校(専修学校)のみで、他はすべて個人立の学校である。)昨年秋には、白鴎大学の奥島孝康学長、京都大学の山極壽一総長(当時)など現職の学長および総長を含む25人の大学教職員が呼びかけ人となり総勢709人の大学人らが名を連ねる「朝鮮学校の学生に『学生支援緊急給付金』の公平な給付を求める大学教職員声明」が発表された。