〈特集・ヘイト解消法5年〉関連年表/在日朝鮮人とヘイトスピーチ
2021年06月03日 14:17 主要ニュース解消法施行から5年、地方自治体における条例制定などヘイトスピーチをとりまく日本社会の環境は変化した。しかし好転的な流れの一方で、規制網が及ばない場面でのヘイト行為が量産されている。2016年の施行から現在までの関連事項をまとめた。(参考・5.26院内集会事務局作成資料)
- 赤=在日朝鮮人に向けられたヘイト行為
- 青=排外主義者たちによる政治活動
2016年
- 6月3日:「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)が施行
- 6月5日:解消法施行後に行われた川崎市中原区でのヘイトデモが、多くの市民やカウンターらにより中止に追い込まれる
- 7月1日:大阪市が「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(以下、「大阪市条例」)を施行
- 7月14日:東京都知事選に元「在特会」会長が立候補し、差別的な「演説」を繰り返す
- 10月7日:福岡地裁が、福岡市内の商業施設に差別ビラを無断で貼り付け逮捕された男性に対し「懲役1年、執行猶予3年」の判決
- 12月20日:大阪地裁が、ヘイトデモを予告し呼びかけた大阪府内の男性に対し、コリアNGOセンターの事務所から半径600メートル以内におけるデモを禁止する仮処分を決定
2017年
- 3月30日:「大阪市条例」に基づく審査会が、ネット上に公開された3件の動画がヘイトスピーチに当たると初めて認定
- 4月1日:香川県観音寺市が、「人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して、当該属性を理由として不当な差別的取扱いをすることを助長するおそれのある行為」を禁止すると条文に明記した「観音寺まちなか交流駐車場の設置及び管理に関する条例」を施行
- 7月16日:排外主義者たちが、前年中止に追い込まれた川崎市中原区のヘイトデモのリベンジと称しデモを予告し強行
- 11月12日:ヘイトスピーチを伴うデモや街宣に参加してきた「日本国民党」代表の排外主義者が葛飾区議に立候補し当選
- 11月19日:東京弁護士会による「朝鮮学校への適正な補助金交付を求める会長声明」(2016年4月22日)をめぐり、所属弁護士らへの懲戒請求が差別ブログで呼びかけられたことに対し、同弁護士会会長が抗議声明発表。同日までに計13万件の懲戒請求が届く
- 11月29日:在日同胞女性でフリーライターの李信恵さんへの差別発言で、在特会に対し賠償命令。最高裁は在特会の上告を不受理したため「人種差別と女性差別との複合差別にあたる」とした2審判決が確定
2018年
- 2月23日:「在特会」らのデモにも参加していた右翼活動家と元暴力団員の男性2人が、未明に総聯中央会館の通用門に銃弾を5発撃ち込む(同年10月に懲役刑求刑)
- 3月31日:川崎市が「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく「公の施設」利用許可に関するガイドライン」を施行
- 4月1日:東京都世田谷区が「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」を施行
- 4月1日:京都府が「京都府公の施設等におけるヘイトスピーチ防止のための使用手続に関するガイドライン」を施行
- 4月20日:京都地検が学校法人・京都朝鮮学園の名誉を傷つけたとして、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)元幹部に対し名誉毀損罪を初適用し在宅起訴
- 5月18日:川崎市在住の在日同胞女性に対するネット上の匿名ヘイト、脅迫罪で初の書類送検。*19年2月22日に不起訴処分
- 8月30日:国連人種差別撤廃委が、日本の条約実施状況に関する総括所見を公表。包括的な人種差別禁止法の採択など条約実施のための改善勧告を出す
- 10月21日:徳島教組襲撃事件に関与し威力業務妨害などで有罪判決を受けた排外主義者が、兵庫県川西市議に立候補し当選
- 10月23日:弁護士への大量懲戒請求事件をめぐり金竜介弁護士が懲戒請求者に訴えた裁判で、東京地裁が33万円の支払いを命じる判決(19年5月14日判決確定)
- 12月11日:在日同胞女性でフリーライターの李信恵さんへの差別発言で賠償命令、最高裁は、特定の民族に対する差別的内容を配信するなど、問題視されてきたまとめサイト「保守速報」側の上告を棄却、1、2審判決が確定し完全勝訴
- 12月20日:川崎在住の朝鮮ルーツの男子中学生に対するネット上の匿名ヘイト、侮辱罪で初の処罰。科料9千円の略式命令
2019年
- 2月5日:沖縄在日同胞男性へのネット上の匿名ヘイト、名誉毀損罪で初の処罰。略式起訴、罰金10万円の略式命令
- 3月9日:「京都朝鮮学校襲撃事件」から10年に際し、実行犯らが京都市内でヘイトデモを行う
- 4月1日:東京都国立市で「人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」が施行
- 4月1日:東京都で「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現のための条例」(以下、「都条例」)が施行
- 7月5日:東京地裁が、東京中高の最寄り駅である十条駅前でヘイトデモを行っていた男性に対し、同校から半径500メートル以内でのデモを禁止する仮処分決定
- 10月16日:「都条例」に基づき同年5月20日に練馬区内で行われた街宣と6月16日に行われたデモで「不当な差別的言動」があったと公表
- 11月1日:大阪府で「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」が施行
- 11月29日:京都地裁は「在特会」元幹部に対し、京都第一初級(当時)への差別的な発言で社会的評価をおとしめたとして罰金50万円(求刑懲役1年6ヶ月)の判決(20年12月14日に判決確定。しかし元幹部の行為に「公益目的」を認める)
- 12月9日:「都条例」に基づき、同年9月15日に墨田区内で行われたデモで「不当な差別的言動」があったと公表
- 12月24日:毎年9月1日に東京・横網町公園で開催される関東大震災朝鮮人虐殺の追悼式主催者に対し、東京都が、17年から同日同時刻に開催されている排外主義団体のヘイト集会と同様に、「管理者が集会の中止を指示したら従います」などとする誓約書の提出を求める
- 12月27日:川崎簡裁が、在日同胞女性に対しTwitter上で匿名ヘイトを行った男性へ罰金30万円の略式命令
2020年
- 1月4日:多文化交流施設「ふれあい館」(川崎市桜本)に差別脅迫はがきが投函されていたことを職員が発見
- 1月27日:多文化交流施設「ふれあい館」に爆破予告が書かれたはがきが投函
- 2月16日:元日本第一党茨木県本部長の排外主義者が茨城県那珂市議に立候補し当選
- 4月1日:神戸市で「神戸市外国人に対する不当な差別の解消と多文化共生社会の実現に関する条例」が施行
- 6月12日:川崎市の多文化交流施設「ふれあい館」に差別脅迫はがきを送った元市職員の男性が威力業務妨害容疑で逮捕
- 6月18日~7月5日:東京都知事選に元「在特会」会長で現「日本第一党」党首が出馬、約18万票を獲得
- 7月1日:川崎市で「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(以下、「川崎市条例」)が施行
- 7月1日:東京都狛江市で「人権を尊重しみんなが生きやすい独江をつくる基本条例」が施行
- 7月2日:フジ住宅に勤務する在日同胞女性が会社から受けた差別事件に対し、大阪地裁堺支部がフジ住宅と同社会長に110万円の賠償命じる判決
- 8月3日:「都条例」基づき2019年9月1日に行われた排外主義団体のヘイト集会で「不当な差別的言動」があったと公表。
- 8月20日:「もし75年前にSNSがあったら」という設定で被爆者の日記などをもとに若者らが投稿するNHK広島放送局の企画「1945ひろしまタイムライン」において、6月16、20日に投稿されたツイートが朝鮮人への差別を誘発する内容であるとして批判を受ける
- 8月26日:福岡法務局がJR九州・折尾駅でのヘイト街宣(19年3月11日)をヘイトスピーチと認定
- 9月1日:関東大震災朝鮮人虐殺の追悼式の近くで、排外主義団体がヘイト集会開催
- 10月9日:川崎市「差別防止対策等審査会」が7月に市から諮問された投稿9件について審議、投稿9件すべて「不当な差別的言動」にあたるとし、このうち現在も閲覧できる2件について「削除要請するのが適当」と判断、削除を要請するよう市に求める答申書を発表
- 11月20日:「川崎市条例」に基づき、投稿に差別的内容が含まれたネット掲示板やブログの運営会社に対し削除要請、概要を公表
- 12月3日:横浜地裁川崎支部が、川崎市の多文化交流施設「ふれあい館」に差別脅迫はがきを送り威力業務妨害罪に問われた元市職員の男性に対し、懲役1年を命じる実刑判決
2021年
- 3月8日:東京地裁立川支部は、東京・小平市にある朝鮮大学校周辺で、同校などを非難・誹謗中傷する街宣活動を行っていた男性に対し、学校正門から半径500メートル以内でのデモなどを禁じる仮処分決定
- 4月9日:大手化粧品会社DHCの会長が、同社のHPに在日朝鮮人に対する差別的文章を掲載 *2016年、2020年にも自社HPなどを通じ在日朝鮮人への差別的発言を度々行ってきた*5月31日までに計3つの投稿がすべて削除されるが謝罪文はなし。
- 5月12日:東京高裁は、川崎在住の朝鮮ルーツの男子中学生に対するネット上の匿名ヘイトを行った男性の行為を人種差別と認定。慰謝料など130万円の支払いを命じる