〈高校無償化訴訟〉公正公平な判決求め、署名運動に拍車
2021年05月31日 13:52 主要ニュース 民族教育“広島、まだ終わっていない”
2010年に始まった高校無償化制度の対象から朝鮮学校が除外されたのは違法だとして、各地の朝鮮高校卒業生らが原告となり行われている裁判と関連し、最高裁へ公正公平な判決を求める署名運動に拍車がかかっている。
現在、「広島無償化裁判を支援する会」「日朝友好広島県民の会」「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」が呼びかけ団体となり行われているこの署名運動は、昨年10月の控訴審でそれぞれ原告敗訴の不当判決が出て以降、最高裁へ上告中にあった広島、九州両地域の関係者たちが連携し、この問題に取り組んでいこうと企画されたもの。5月30日を第1次集約、来月30日を第2次集約として、署名とハガキによる裁判所への働きかけを行ってきた。
呼びかけ文では、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、教育の機会均等に寄与すること」という高校無償化法の趣旨・目的からすれば、朝鮮高校のみを無償化の対象から外すのは、なんら正当性がなく、さらには文科省が省令改悪をしてまで、朝鮮高校が無償化となる道を断った「日本政府の露骨な朝鮮学校外しは異様」だと指摘。そのうえで「このような国のなりふり構わぬあからさまな差別を許してはならない。まだ闘いは続いている」として、署名運動への協力と賛同を呼び掛けている。
一方、高校無償化裁判と関連しては、2019年8月27日の東京、大阪、昨年9月2日の愛知につづき九州でも国の行為の違法性について「判断の必要なし」とした判決が5月27日付で確定(最高裁第1小法廷、深山卓也裁判長)した。
広島以外のすべての地域で原告敗訴が確定するなか、呼びかけ団体の「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」の村上敏代表は、「まともに審理をしたのかと思うほどだ」と、九州無償化裁判の最高裁決定に異を唱えながら、「九州の判決が確定し、全国的に(無償化裁判は)終わったと捉えている人もいるが、まだそうじゃない。こんなにもひどいことが続いている現状に、最後までたくさんの人がNOと声をあげなくてはならない」と、2次集約までに、さらなる協力を呼び掛けた。
村上代表によれば、署名は現在1次集約作業中で、香川、新潟、茨城など各地からすでに2万以上が集まっているという。
(韓賢珠)
問い合わせ先・署名郵送先
「広島無償化裁判を支援する会」 事務局
住所=広島市中区八丁堀 5-22 メゾン京口門 404 足立・西法律事務所気付
電話=090-7540-0332
メールアドレス=musyouka.hiroshima@gmail.com
「高校無償化」制度と朝鮮高校除外
~通称・「高校無償化」制度。正式名称は「高校授業料無償化・就学支援金支給制度」。民主党政権の目玉政策として2010年度にスタートした同制度は、高校無償化法(高等学校等就学支援金の支給に関する法律 )に基づき、授業料の低減を目的に公立高校の授業料を無償化、また私立高校(外国人学校含む)には就学支援金を支給する制度だ。当初、朝鮮高校は無償化の対象に含まれていたが、中井拉致担当相(当時)の除外要請など一部国会議員らの横やりにより、朝鮮高校を無償化対象にするか否かを判断するため、検討会議が発足される(2010年5月)。その後、同年11月23日の延坪島砲撃事件を機に、審査は凍結(2010年11月)され、審査再開(2011年8月)後も結論が出ないまま、自民党政権に移行した。2012年末、文科省は無償化対象から朝鮮高校を外す方針を表明。 翌13年2月20日付で、文部科学省令の改悪により、 朝鮮高校の無償化適用根拠となる規定を削除し、制度の対象外となったことが各地の朝高に通知された。