今後の闘いに向けた意思統一の場/福岡で無償化即時適用を求め県民集会
2021年02月16日 09:28 主要ニュース 暮らし・活動 民族教育朝鮮学園支援全国ネット「行動月間」に伴い
「高校無償化即時適用実現全国統一行動に連帯する福岡県民集会」が13日、福岡県北九州市の北九州市立商工貿易会館で行われ、九州中高の生徒と教員、保護者をはじめとする同胞と日本の支援者ら約150人が参加した。
集会は、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」が朝鮮学校を支援する各地の支援団体へ「全国行動月間」として呼び掛けた行動提起に呼応したもの。「全国行動月間」は、日本政府が省令「改正」により朝鮮高校を高校無償化の対象から除外した2013年2月20日に際し、2015年以降各地で毎年行われてきた。
はじめに、主催者あいさつと基調報告を「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」事務局長の瑞木実さんが行った。
瑞木さんは、高校無償化制度が施行され10年、裁判闘争が始まり7年、現在最高裁へ上告中にある九州無償化裁判の運動過程を振り返りながら、「ここ10数年来、日本政府による民族教育への差別政策が激しくなっている。『国民の理解が得られない』という自分たちに都合のいい理由で朝鮮高校を無償化対象から外し、2019年には幼保無償化からも朝鮮幼稚園など外国人学校幼稚園を除外した。さらにコロナ禍での学生に対する救済策となる給付金制度からも朝鮮大学校を除外するに至った。これらの根底にあるのは日本政府や地方自治体の朝鮮学校つぶし、民族教育つぶしに他ならない」と指摘。そのうえで、「今日の集会を今後の闘いに向けた意思統一の場にしたい」とその意義を強調した。
また基調報告では、九州無償化弁護団で弁護団長を務め、「朝鮮学校を支える会・北九州」でも代表を務めるなど、生前、弁護士そして一市民として九州地域の朝鮮学校に寄り添い続けた服部弘昭さんが、昨年9月20日に他界したことが報告されたほか、裁判闘争を通じ生まれた連帯の成果として①九州・山口5つの朝鮮学校支援団体からなる5者会議が構成(2016年~)されたこと、②2019年3月14日の1審判決以降に始まった毎月第2木曜の街頭宣伝などがあげられた。
瑞木さんは、今後、最高裁上告勝利に向けた取り組みとして、九州同様に上告中にある広島訴訟団など各地支援団体との連携強化、支援者拡大のための広報活動、マスコミや国会・地方議員への働きかけをおこなうこと、また中長期的な取り組みとして、民族教育擁護を目的としながら裁判闘争の経験を糧にした関係者らの連携強化、地方自治体への定期的な働きかけなどを行っていくとした。
再確認した在日朝鮮人への差別
つづいて、弁護団報告を安元隆治弁護士が行った。
安元弁護士は、各地5ヵ所で行われてきた裁判で、大阪地裁を除くすべての裁判所が原告敗訴の判決を下したことに対し「弁護士として力の足りなさを感じる」と胸の内を明かしながら「なんでこんな判決になるのかというのが率直な感想だ。学びたい生徒に経済的支援を行おうというのが制度本来の趣旨にも関わらず、在日朝鮮人に対する差別という形で制度が用いられていることは許し難いこと」だと改めてその不当性を訴えた。
九州無償化裁判では、昨年10月30日、福岡高裁が、朝鮮高校を無償化の対象外とした文部科学大臣の判断は「裁量の範囲を逸脱、濫用しておらず」、適用根拠となる規定ハ削除の違法性についても「判断する必要がない」として、1審判決(2019年3月14日)を支持。原告側の請求を全面棄却している。これを受け、弁護団では同年11月11日付で最高裁へ上告。今年1月に上告理由書面を提出した。
安元弁護士は、一連の不当判決に対し「実際に生の事実を見ないまま結論づける。そのような世の中の風潮がそのまま判決文に反映された」と警鐘を鳴らす。そのうえで「現場を見もせずに何が適法なのか。司法がどう判断をしようが、これが在日朝鮮人に対する差別であることは間違いない」と言及した。
また同氏は、裁判闘争が最終局面を迎えるいま、幼保無償化やコロナ禍での学生給付金、一昨年にあった折尾駅前でのヘイトスピーチ事件など、現在進行形の諸問題について引き続き弁護団がその役割を果たしていくことを強調する一方で、「朝鮮学校に携わることで感じた朝鮮学校の良さを一人でも多くの人に知ってもらいたい」と、学校教育の良さを発信する方法についても考えていきたいと述べた。
次に、生徒代表あいさつとして九州中高高級部2年の都滉世さんが登壇した。
「思い返せば僕は、ずっと先輩たちの背中を見てきました」
自身が初級部生の頃に始まった裁判と、中級部3年時にみた差別を追認する地裁、そして昨年高級部生として経験した高裁での不当判決―。それらの現場には、頼もしい朝高生の先輩たちがいたと都さんはいう。
都さんは「ウリハッキョは朝鮮人として、格好良く生きる術を教えてくれる場所。そして先輩たちがみせてくれた背中を、次は自分が後輩たちにみせたい」と、今後も続く民族教育擁護運動への決意を新たにした。
裁判が始まった2013年当時、朝高生だった九州中高教員の余信徹さんは「教員として母校に帰ってきて再びこの問題に向き合っている。あの頃から今日まで何度も全身が震えるほどのくやしさと怒りを覚えた」と話す。
余さんは「高校無償化からの朝鮮高校除外は、過去の植民地支配の歴史を否定し、私たち朝鮮人の存在を排除しようという日本政府の考えそのものだ」と訴えながら、「たった3年しかない貴重な高校生活の時間を、裁判闘争に費やさせてしまっていることが、学びの場を提供する一人の大人として、朝高の卒業生として後輩たちに本当に申し訳ないと感じている。しかしこの現状で私たちが声をあげない、ということはできない」と力を込める。