九州無償化弁護団・清田美喜弁護士が講演/山口県ネットワーク行動で
2021年02月12日 15:05 主要ニュース 民族教育運動を下火にせず、常に学び行動を
10日、山口県下関市内で行われた「すべての子どもに学ぶ権利を!」朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク行動(共催=朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク・山口補助金対策委員会)。1部の集会では、九州無償化弁護団の清田美喜弁護士が「『無償化裁判』から未来へ」というテーマで講演した。
清田弁護士ははじめに、「いろんな縁や偶然が重なり」現在、在日朝鮮人の人権問題に携わっているとしながら、法律家を目指したきっかけに「402号通達事件」*があったことや、学生時代の在日朝鮮人の友人との出会い、弁護士登録をした日が九州無償化裁判の提訴日だったことなどを紹介。そのうえで、今回のテーマとなった高校無償化裁判について、とりわけ補助金停止問題など山口における運動との関係性に着目しながら、法的な観点で解説した。
講演ではまず、山口県による山口初中への補助金停止と高校無償化制度の接点について、「一番は、県が2013年に補助金の予算計上をしないと表明した際の理由にある」と指摘。
清田弁護士は、当時山口県が、①高校無償化から朝鮮高校が除外されたこと、②朝鮮学校への補助金支給に関する他県(広島)の動向、③共和国の報道に対する国内外の受け止めを勘案した結果、県民の理解を得ることが困難だという理由を並べたことに言及したうえで「この理由は2013年2月に示されており、朝鮮高校に高校無償化制度の不指定処分がされてすぐのこと」だと、国の動きに追従する形で、各地でも補助金が停止されていく流れがあったと強調した。
またこれら差別政策が加速する原因について、2012年12月28日、当時の下村博文文部科学大臣が、第2次安倍政権成立後の会見で行った発言(「…朝鮮学校については拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいること等から、現時点での指定には国民の理解が得られず、不指定の方向で手続きを進めたい…」)に改めて言及。「これにすべてが集約されている」とし、国が高校無償化から朝鮮高校を除外した考え方は、地方自治体による補助金不支給の問題にも通底していると語気を強めた。
つづいて清田弁護士は、高校無償化制度と朝鮮高校が不指定処分となるまでの経緯を整理したうえで、これまで大阪地裁を除くすべての裁判所で、朝鮮学校と総聯の関係性に不当な支配論を持ち出し、それを「規程13条に適合すると認めるに至らない」という理由の根拠にしていることを指摘。
「歴史的経緯を踏まえれば民族教育について(総聯が)協力関係にあるとした大阪地裁の認定のほうが自然だ。教育のレベルを見るはずだった規程が、別の方向で使われ不指定処分にされる。差別を隠すためにもっともらしい理由をつけたと指摘するほかない」(清田弁護士)
“被害は再生産される”
この日の講演で、特に参加者たちの注目が注がれたのは「裁判に負ければすべて終わりなのか」という同氏の問題提起とそれに対する考えだった。
「子どもたちは毎年入学し、支援を受けられず卒業していく。ずっと被害は再生産されている。これをどこかで止めなくてはいけない」