〈広島無償化裁判〉旧植民地姿勢の踏襲、日本人として恥ずべき/フォーラム平和・人権・環境が声明
2020年11月04日 11:34 主要ニュース 民族教育国が朝鮮学校を無償化の対象にしなかったのは違法だとして、広島朝鮮初中高級学校を運営する学校法人広島朝鮮学園および同校卒業生ら110人が原告となり、国に対し不指定処分処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟で、広島高裁は16日、一審の地裁判決を支持し、国の判断を「適法」とする不当判決を下した。これと関連し10月22日、「フォーラム平和・人権・環境」が声明を発表した。以下、声明全文。
広島朝鮮学校無償化訴訟での広島高裁不当判決に抗議する
2020年10月16日、広島高裁(三木昌之裁判長)は、高校無償化の対象から朝鮮高校を除外した国の処分は違法として、「広島朝鮮学園」を運営する学校法人と卒業生109人が処分の取り消しを求めた裁判で、原告の請求を棄却した一審の広島地裁の判決を支持し、控訴を退ける判決を下した。差別と分断を許さず、日本国内で生活する外国人の権利確立を求め、多民族・多文化共生の社会の創造をめざしてきた平和フォーラムは、総身の怒りをもって抗議する。
判決理由で三木裁判長は、公安調査庁の資料や報道をもって、朝鮮学校の教育内容などが在日本朝鮮人総聯合会の影響を受けており、適切な運営がなされているかに疑念が残るとして、朝鮮高校に対する不指定処分は、文科大臣の裁量の範囲を逸脱したとは認められないとした。全国各地の朝鮮学校は、広く地域社会へ学校開放や授業参観などを実施し、民族教育への理解を求め地域社会との交流を深めてきた。植民地支配の過去とその後の政治的確執が生んだ予断と偏見の根拠ない疑念を、子どもたちの権利侵害への理由にあげる暴挙は、司法の判断として許しがたい。
第2次安部政権は、成立間もない2013年2月20日、朝鮮学校が授業料無償化適用の根拠となる規定であった、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」第1条第1項2号の「各種学校であって、我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうち、次に掲げるもの」の中の「(ハ)それ以外の高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるもの」を削除した。このことによって適正な運営が担保されているとしても朝鮮高校は授業料無償化の適用から排除されることとなった。この事実は、教育の機会均等を目的とした授業料無償化の理念に反すると考えるが、判決は「法令改正の違法性については判断を要しない」と切り捨てた。将来にわたって朝鮮学校には無償化を適用しないとする政治的差別に裁判所が追認を与えるこの判断は、いかなることがあっても許されない。
このような政府の姿勢は、朝鮮幼稚園園児の幼保無償化措置からの排除や朝鮮大学校生の学生支援緊急給付金制度からの排除など、様々な場面で表れている。旧植民地支配の態様を踏襲し、民族教育を排除し、日本人になれ、日本の学校に通えとする、きわめて傲慢な政治姿勢が根底にある。朝鮮半島における植民地支配と在日朝鮮人の歴史を一顧だにすることのない政治・司法を許すことは、敗戦後日本国憲法をもって「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」として、平和に生きることをアジア諸国に誓った日本人として恥ずべき事と考える。
平和フォーラムは、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」に結集して、朝鮮学園に学ぶ子どもたちの教育権の保障にとりくんできた。全国各地で、裁判支援の輪が広がり、日本人社会に朝鮮学園と民族教育への理解者が増え続けている。裁判結果に怯むことなく、在日朝鮮人社会と連帯して、差別撤廃に向けてとりくみを強化する。
2020年10月22日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
共同代表 藤本泰成