川崎市「審査会」、投稿9件をヘイト認定/市、近くツイッター社へ削除要請へ
2020年10月11日 11:43 主要ニュース 権利神奈川県川崎市で全国に先立ち制定されたヘイトスピーチに刑事罰を科す条例「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に基づき、「川崎市差別防止対策等審査会」は9日、在日同胞女性の崔江以子さんを攻撃するツイッター投稿9件をヘイトスピーチと認定した。同審査会は16日にも市に答申書を提出する予定で、これを受け市はツイッター社に対し現在も閲覧可能な投稿について削除を要請を行うこととなった。
審査会は9日、第3回目の会合を開き、今年7月に市から諮問された投稿9件(崔さんの弁護団が提出した投稿リストは300件)について審議を行った。結果、9件すべてを「不当な差別的言動」に該当するとしながら、とりわけ現在もネット上で閲覧可能な2件について「削除要請するのが適当」と判断した。
昨年12月、市議会の全会一致で条例が可決・成立し、7月から全面施行されて以降、初の措置となる。一方で、同条例を巡っては、ネット上で広がる人権侵害をいかに規制できるのかといった条例そのものの実効性が問われており、これと関連し同日、崔江以子さんとその弁護団が市内で会見した。
被害者のダメージ、想像して/問われるヘイト禁止条例の実効性
師岡康子弁護士は会見で「弁護団の要請(5月15日)から半年近く経って、やっと認定されたのが300件のうちの9件のみだった。具体的な成果が出たとはいえ、非常に遅い。これでは被害者の救済にならないし、制度上の問題があると言わざるを得ない」と指摘した。
さらに、「9件以外の投稿に対して、市からは5件のみピックアップして審査会に諮問したと報告を受けた。これは非常に問題である」と述べた。
市では、条例施行後にも相次いだ崔さんに対するネット上のヘイトスピーチに対し、モニタリングはおろか弁護団が提出した300件のヘイト投稿のリストを十分な検討を経ず5件のみ選定したのだ。
これに対し師岡弁護士は「(市の)判断が適切なのか話し合いは継続していくが、このような措置は被害者にとって非常に大きなダメージになる。市は被害者の負担を想像できていない。ヘイトスピーチがどれだけ深刻な問題なのか理解されていない」と警鐘を鳴らした。
ヘイトスピーチを許さない川崎市民ネットワークの三浦知人さんも「条例が7月に完全施行され、まだ始まったばかりだとはいえ、差別の是正を推進すべき部局の態度に当惑している。引き続き話し合いながら軌道修正していきたい」と話した。
崔江以子さんは「ネット上でヘイト被害を受けるのは、本当に苦しく、被害を見つめる時は、とても孤独で、声を上げるのはたいへん厳しい。今日は、この被害を分かってもらうこと、救済されることも大変難しいことなんだと感じざるを得なかった」と胸の内を話した。
また崔さんは、被害を訴えた者が攻撃されるという昨今のSNSの問題点を指摘しながら「条例ができて、もう個人の力で被害を訴えなくてもいいと、また、今まで声を上げられなかった人も被害から救済されると思っていた」と言及。そのうえで「ただ今回、9件の投稿がヘイトと認定された。ささやかな前進も評価をして、さらにこの条例の意義が深まるように諦めず、前を向いて声を上げつづけていく。そうして条例の意義をもって、すばらしい条例が施行された喜びを皆で確かめていきたい」と話した。
(李鳳仁)