〈取材ノート〉黄色い点字ブロック
2020年10月05日 11:42 コラム在日無年金障害者たちを取材した。国民年金法に設けられた国籍条項により、国民年金に加入できず、社会保障から締め出された同胞障害者たち。問題を放置し続けている日本政府に怒り、同胞コミュニティーに対して問題への理解と関心を求める声は、力強かった。
そんな彼・彼女たちが教えてくれたことが他にもある。障害者の暮らしだ。
「腕を貸してくれますか?」
取材後の帰り道、全盲で四天王寺大学(大阪)の名誉教授を務める愼英弘さんは、横を歩く筆者にこう言った。路に敷かれた点字ブロックと白杖、そして筆者の腕を頼りにゆっくりと進む愼さんと一緒に歩いてはじめて、道の途中の工事現場や道路を走るたくさんの車から身の危険を感じ、恐怖を覚えた。
「黄色い点字ブロックの内側まで下がってお待ちください」――
列車の接近時、駅のホームで流れるこのアナウンスを誰しも一度は耳にしたことがあるはずだ。1993年に公布された福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律で「視覚障害者誘導用ブロック」という名称で定義されたこのブロック。しかしどれだけ多くの人が、このブロックを頼りに歩く視覚障害者たちのことを意識しているのだろう。
同胞社会にも日本社会にもいろんな人がいる。そして皆で社会を構成し合っている。自分ではない他の人に、少しだけ思いをはせてみよう。さまざまな社会問題の解決の糸口は、いつもその先にある。
(鳳)