〈それぞれの四季〉親元を離れて/崔蓮華
2020年10月22日 12:29 コラム生まれてから24年間、家族のもとを離れて暮らしたことがない。免許合宿や「家出事件」など、短い間、家を出たことはあった。
往復4時間かかる大学さえ実家から通っていた私が引っ越しを控えている。社会人2年目を迎え、これまで1人暮らしを始めるきっかけは何度もあったが、オモニやアボジ、弟と離れて1人で生きていくのは寂しかった。
いつまでも家族を精神的支柱にしてはいけない、独り立ちもしなければならないと思っていた時期に、一緒に住んでみたいと思える人が現れた。とにかくタイミングがよかった。
アパートや引っ越しの日取りもとんとん拍子に決まった。深く考えると、家族と離れる寂しさやこれから始まる暮らしへの不安でモタモタしてしまう気がしたからだ。
しかし、引っ越しが近づくにつれ、不安や疑問が頭をよぎる。家族とは違って、これからは初めて自分で「選んだ人」と生活をともにする。家族と離れる寂しさを乗り越えられるだろうか。親元を離れて自分の力で生きていくことがそんなに大事なことなのだろうか…と。
居心地のいい家族と離れてまで、同居人となる人と暮らしたいと思ったのはなぜだろう。一度きりの人生。自分で「選んだ人」と生活してみるのもいいかもしれない。家族と離れるのが辛ければ帰ればいい。新しい人生のスタート地点。自分を励まし、引っ越しの日を待っている。
(岐阜県在住/特別支援学校教員)