〈広島無償化裁判〉“諦めるまで、負けではない”/不当判決を踏襲した2審判決
2020年10月18日 19:20 主要ニュース 民族教育広島朝鮮学園と広島初中高の卒業生ら109人が原告となり2013年8月1日、広島地裁へ提訴したことで始まった広島無償化裁判。4年の歳月を経て、広島地裁は17年7月19日、処分の取り消しと損害賠償を求めた原告側の請求をすべて棄却する判決を下した。その後、原告側は1審判決を不服として控訴(17年8月1日)。18年5月15日にはじまった2審は、9回の口頭弁論を重ね、今年6月12日に結審していた。
露呈した司法の現状
「本件各控訴をいずれも棄却する」
控訴審判決言い渡し日となった16日。広島高裁の裁判長が言い渡した判決内容は、形骸化する司法の現状を改めて明るみにした。
原告側が申請した証人尋問、本人尋問は一切採用せず、一方で、公安調査庁が作成した報告書などを事実認定の素材として採用。結果、朝鮮高校が指定対象となる根拠規定ハを削除した省令の違法性については判断を回避した1審判決。
原告側弁護団では、1審判決を受け、2審では規定ハ削除の違法性に対し、司法が判断を下すよう求める訴訟活動に重点を置いてきた。
控訴審判決では、本件訴訟における主な争点として①広島朝鮮初中高級学校が規程13条に不適合だとした下村文部科学大臣(当時)の判断に裁量の逸脱、濫用が認められるか②朝鮮高校に対する不指定処分は手続き上、違法があり無効となるか③規定ハを削除した省令改正は、不指定処分を違法とする根拠となるか④不指定処分は憲法や国際人権法に違反するか―、以上の4点をあげた。
裁判長はまず①について、原告側の主張が「不当な支配」説を払しょくするには足りないことから、文部科学大臣の判断は不合理なものとはいえず、したがって大臣の判断は「一定の裁量を逸脱または濫用したものとは認められない」とした。
さらに②については、審査会の結論を待つことなく処分したことは規程の範囲内であり、学園側へ不指定通知をする際、違法はなかったとして無効にならないと判断。控訴審で原告側が強く主張してきた③については、①、②を理由に「判断を要しない」と回避した。また④についても①を理由に、原告の権利を侵害するものとは言えないと判断し、結果、1審判決となんら変わりのない判決を下した。
今回の不当判決を受けて原告側はただちに上告する意向を示している。
判決の後行われた記者会見の場で原告側弁護団の平田かおり事務局長は、原審と同じく規程13条の適合性のみで判決が下されたことについて「規定ハ削除の違法性について判断しないと問題の本質は見えない」と、判決内容を強く非難した。