〈幼保無償化適用を/「多種多様」を問う 2〉遠山栄一郎さん(日本空手道大濤会仁勇館館長)
2020年07月07日 16:47 主要ニュース差別・排外主義に反対する日本の有識者たちが、朝鮮幼稚園をはじめとした各種学校認可の外国人学校幼稚園への幼保無償化適用を求めている。差別なき社会を実現するための道筋について、各界の有識者たちに話を聞いた。
他者尊重の精神を教育でも
2012年から朝鮮大学校空手道部の特別コーチを務めている。在日朝鮮人とは、空手界をはじめ、NPO法人ソーシャルマイノリティ協会や日韓仏教福祉協会で社会活動に取り組んでいた時から深いかかわりがあった。朝大からコーチの依頼を受けた際も、在日コリアンに対する偏見などはなかった。
私が運営する仁勇館での練習で朝大生の指導にあたっているが、朝大生たちは真面目に練習に取り組み、私としっかりと向き合ってくれる。純粋で素直な印象を抱いた。
スポーツでは平等の大切さ、他者を尊重する精神を学ぶことができる。競い合う相手がいなければ、自分が培った技術や練習の成果も発揮することができない。スポーツでは他者と相対することで他者尊重、相互理解が生まれる。
IOCのジャック・ロゲ前会長が、「スポーツとは社会であり、社会とはスポーツである」という言葉を残している。スポーツで生まれた価値ある精神や功績は、社会に還元すべきということではないだろうか。
私は「社会とは教育であり、教育とは社会」と考えている。そこに差別があってはならない。にも関わらず、幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとした外国人学校幼稚園が除外され、子どもたちの学ぶ権利が侵害されている。ある在日朝鮮人の家庭では、日本の保育園に通う上の子どもが無償化の対象となり、朝鮮幼稚園に通う下の子は無償化の対象外という、理不尽な状況に置かれている。在日朝鮮人も等しく負担している消費税増税分を財源にしているにも関わらず、絶対数が少ない朝鮮幼稚園が制度の対象から外されている。理解しがたいことだ。
日本は戦後、一貫して在日朝鮮人の民族教育権を侵害し、子どもたちを執拗に政治利用してきた。植民地支配責任も未精算のまま、子どもたちに「母国の言葉や歴史を学ぶな」というのはおかしい。学ぶ機会は、国や国籍に関係なく平等に保障されるべきである。
日頃から「他者尊重」「自他共栄」を子どもたちに教えている身として、この問題を見過ごすわけにはいかないし、スポーツ界からも声をあげていかなければと思っている。在日朝鮮人について知り、交流を促進していくことが大切だ。
朝大空手部のコーチを務め、学生たちを指導し、在日空手界の技術力向上に携わるということは、まさに交流であり、とても幸せなことだ。仁勇館でも在日の選手たちと日本の選手が交わり、一つのチームとして空手の大会に出場している。団体戦で優勝し、同じ表彰台に上がって共に喜んでいる光景は、交流が成功している証だ。
朝鮮学校は地域社会との交流も盛んに行っている。草の根の活動が日本社会全体にも波及していくよう、一緒に活動していきたい。
(全基一)
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