〈幼保無償化適用を/「多種多様」を問う 1〉佐高信さん(評論家)
2020年06月23日 11:51 主要ニュース差別・排外主義に反対する日本の有識者たちが、朝鮮幼稚園をはじめとした各種学校認可の外国人学校幼稚園への幼保無償化適用を求めている。差別なき社会を実現するための道筋について、各界の有識者たちに話を聞いた。
違いから出発しないと
「純血種」を持ち上げ、ヘイトスピーチを叫ぶ人々は、ある意味「玉ねぎ」と一緒である。皮をむいていくと、最後には何も残らない。つまり彼らは、生活や社会における拠り所がなく、自らを支えるつっかえ棒を持っていない。その弱さから、寄りかかる「何か」を求め、社会的弱者の在日コリアンらを攻撃の的にする。「純血種」だって、血筋を何代も前に遡れば気づくことだろう。人間はみな「混血」なんだ。朝鮮半島の血が混ざっている人も少なくない。なのに、そのことを認めようとしない。
友人の子どもが米国の学校に通っていた際、授業で作文を書くことになったそうだ。テーマは“I’m different”。髪の毛の色や瞳の色、背丈、優しさなど、心身の違いを作文に綴っていく。みんな違いがあって当たり前。だが日本では、家庭、学校、会社、社会で同調圧力が押しつけられていく。同じことをしていれば怒られない。違うことをすると叩かれる。これではおかしいじゃないか。みんながそれぞれの個性を持っているのだから。なにごとも違いから出発しないと。
もう一つ話しておくなら、ルネサンス時代のイタリアでは孤児が「インノチェンティ 」(無辜な)、つまり罪なき子と呼ばれていたという。どのような形で生まれてきても子どもに罪はない、子どもは社会の公共の財産であるという考え方が、ルネサンス期の人間中心の文化にあった。そのような思想が社会を形づくっていたからこそ、文化や芸術などさまざまなものが花開いた。一方、日本では婚姻関係にない男女間に生まれた婚外子が、「私生児」と呼ばれ、軽蔑されてきた。
安倍晋三や麻生太郎をはじめ血統にしがみつく為政者たちには、違いを認める逞しさが著しく欠如している。だから日本政府は、国民の税金を「違い」が目立つところ、朝鮮学校には支給しないと言い出す。小池百合子のような差別主義者も同じだ。関東大震災時の朝鮮人犠牲者の追悼式に、都知事名の追悼文を送ろうともしない。
日本には、学生時代に模範回答しか答えず、社会に出てもマニュアル通りに働いてきた、そんな官僚ばかりだ。だから、コロナウィルスの感染が拡大している昨今の緊急事態にも、全く対応できていない。日本の政治家のひ弱さや無能さ、日本社会の病根が日に日に露呈されている。
今の日本社会に欠けているのは、絶望だ。こんなことを口にすると、他の人たちから、気持ちが暗くなると言われる。だが、もっと絶望と直面しないとだめだ。なぜなら、絶望的な闘いの中からしか希望は生まれないからだ。目の前の問題と本気で闘う人間がどれくらいいるかで、社会は変わってくる。
(李永徳)
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