政権の国家観、歴史観を反映/日本の中学校検定教科書問題
2020年04月21日 12:17 主要ニュース 歴史侵略戦争の美化、独島問題歪曲など
来春から日本の中学校で使われる、新しい教科書の検定結果が公表された。教科書には、独島(竹島)を南朝鮮が「不法占拠している」という記述や日本の侵略戦争・植民地支配についてアジアを植民地から解放する「自衛戦争」であったかのように美化した記述など、「政権見解」に基づいた記述が多く含まれた。専門家は新教科書の内容について「安倍政権の国家観、歴史観を強権的に反映させたもの」と指摘する。
82%が領有権を主張
文部科学省は3月24日、21年度から4年間使用される、新学習指導要領のもとで作成された中学校教科書の検定結果を公表した。
検定結果を見ると、中学校社会科の歴史7種、地理4種、公民6種の3科目17種の検定通過本のうち、独島を南朝鮮が「不法占拠している」との主張が全体の82%の14種に記述されていた。
領土問題をめぐっては、14年の指導要領解説の改定で、北方領土に加え、独島と尖閣諸島についても「我が国固有の領土」などと明記され、今回はこれが指導要領にも記載された。
日本文教出版は社会科の歴史教科書に「日本政府は竹島が一度も他国の領土であったことのない日本固有の領土だと主張している」と書いている。
独島の領有権を主張するため、独島でのアシカ猟の写真を使用した教科書も増えた。日本政府はこれまで、日本の漁民が以前から独島でアシカ猟をしていたことをもって、独島領有権の根拠だという見解を示してきた。
採択率が最も高い東京書籍の歴史教科書には「サンフランシスコ平和条約が発効する直前、韓国は公海上に一方的に境界線を引いて日本固有の領土である竹島を韓国側に入れ、不法に占拠している」という一文が入った。このほかにも検定を通過した7種の中学校社会科歴史教科書のうち4種に「日本固有の領土であり、韓国が不法占拠している」という内容が盛り込まれた。
「強制性」を削除
育鵬社の教科書では、日本の侵略戦争や植民地支配について、歴史的事実を歪め正当化する記述が目立った。
アジア太平洋戦争について「日本は、この戦争を『自存自衛』の戦争としたうえで、大東亜戦争と名付けました」「(大東亜会議)以降、アジアの国々を欧米による植民地支配から解放し,大東亜共栄圏を建設することが、戦争の名目として、より明確にかかげられるようになりました」などと記述したほか、小見出しにも戦時中に日本が唱えた「大東亜戦争」を併記するなど、アジア太平洋戦争がアジアを植民地から解放する「自衛戦争」であるかのような記述を行った。
また植民地支配の下で行われた強制連行に関して東京書籍は、「多数の朝鮮人や中国人が、意思に反して日本に連れてこられ、鉱山や工場などで劣悪な条件下で労働を強いられました」と今回初めて記述。同社の小学校教科書には「強制的につれてこられて」と記述されていたが、「強制的」の文言が中学校の教科書からは削除されていた。
一方、日本文教出版は「賠償問題と歴史認識」と題したコラムで15年に引き続き、「1965年の日韓請求権協定において、国家と個人の請求権問題は完全かつ最終的に解決されたことを確認するとともに、日本は韓国に経済援助を行った」と記した。しかし、そもそも請求権協定は、日本政府の賠償責任を当時の日・南政府が「経済協力」という形で妥結したものだ。日本政府も当時から請求権協定により放棄されたものは外交保護権であり、個人の請求権そのものは消滅していないとの見解を示している。
教科書会社の自主規制
市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の鈴木敏夫事務局長は、領土問題や歴史認識などの記述において、現政権の見解が色濃く反映された根底には、「日本軍『慰安婦』問題をはじめ、侵略や加害の歴史を否定したい政権の体質があり、安倍政権の『教育再生』の下、教科書会社が政権に忖度せざるを得ない構図が作られている」と指摘する。
第2次安倍内閣発足後、「教育再生」を標ぼうした一連の「教育改革」では、