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新型コロナウイルスが招いた新たな問題/非常時の差別、偏見と風評被害

2020年04月16日 15:58 主要ニュース 歴史

新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るっている。感染が広がる日本で、現在ウイルス同様に深刻な問題となっているのは、差別や偏見、風評被害である。

悪質なデマや発信力のある人々の無責任な発言、そしてそれらのファクトを確認することもなく拡散するメディアの存在―。

なかでも近年、台風や地震など自然災害による非常時には、必ずといっていいほど、外国人をはじめ社会的マイノリティへの排斥の風潮が流れている。今回のコロナウイルスと関連しても「中国人はゴミだ」「日本から出ていけ」などといった中傷が早い段階で問題になったが、これはまるで、流言飛語により数多くの同胞が虐殺された関東大震災時を彷彿とさせる危険な兆候にほかならない。

ジャーナリストの安田浩一さんは、このような現象を「非常時レイシズム」と表現したうえで、新型コロナウイルスをめぐる昨今の排他的な風潮についても「非常時レイシズムと便乗ヘイトは、ウイルス以上の感染力をもって日本社会に広がっているようだ」と警鐘を鳴らしている。(安田浩一「命の線引きされた気持ち」 新型コロナ拡大が招く「外国人嫌悪」の危うさhttps://news.yahoo.co.jp/byline/yasudakoichi/20200404-00171271/

一方、新型コロナウイルスをめぐっては、事業主だけでなく個人の生活保障を求める声が高まっているなか、自民党の小野田紀美議員は3月30日、本人のSNSを通じて「一律現金給付等は当然国民に限るよう徹底する旨も要望致しました」と発言。「国民」以外は保護対象に含むべきではないという差別発言を、平然と言ってのけた。この発言は、その後すぐさま拡散され、多くの大衆の目に触れるだけでなく、発言に感化されたネトウヨたちが「在日に給付金を与えないで」「国民限定は当然」といったリプライをするなど、ヘイトを助長している。

このような社会混乱のなかで生まれる排他的論調について、ジャーナリストの斎藤貴男さんは、「弱いもの見つけて差別することを為政者が奨励している」と指摘する。

「昨今、在日の方々をはじめ差別されてきた対象にさらに差別を加えることで、内面のバランスを保とうとしている人が極端に増えている。日本は、新自由主義により弱肉強食の社会が形成され、弱い者への差別や罵倒がエスカレートした背景がある。世界ではそれがアジア人に向かい、日本の場合は在日に強く向かった。人間は誰しも迷惑をかけ合い生きているものだが、なぜか自分のことは棚にあげ、他人から一方的に迷惑かけられたと思い込んでいる。緊急時には人間の弱さがもろに出るものだ」

また同氏は、今月発売された月刊誌「文藝春秋」で、吉村洋文・大阪府知事の「法律を超えた政治判断も必要」などとする発言が紹介されていたことに触れたうえで「法律を度外視しても決断するという発言は、場合によってありえないとはいえないが、コロナ対策をめぐっては、政治家たちが高揚して権力を誇示したがる態度ばかりが目立っている」と懸念を示した。そのうえで、このような状況を解消するためには、政治や経済、社会のあらゆる動きを「一人ひとりが常にチェックし、ことあるごとに指摘しながら監視の目を緩めないことが必要だ」と話した。

(韓賢珠)

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