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〈それぞれの四季〉“ファイアーアーベント”/李勇燦

2020年02月05日 23:20 コラム

ドイツの研究所に来て驚いた。皆仕事を終えるのが早い。事務室や技術管理室は午後3時頃には閉まり、夕方5時になると研究所全体が閑散とする。このことを表すドイツ語に、ファイアーアーベント(Feierabend)という言葉がある。祝日ならぬ祝夕、転じて仕事が終わった後を意味する。「ファイアーアーベントする」は「仕事を終える」となる。「今日は仕事終わり?良いファイアーアーベントを!」。こんなあいさつがよく交わされる。

日曜日の休み方も独特だ。スーパーも含めほぼ全ての店が閉まる。買い物もできないなんて、と初めは不便に思ったが、今考えると買い物も立派な仕事だ。日曜日は、自分の時間に当てるのがドイツのしきたりらしい。家族と喋る、山を歩く、芝生に寝転がりぼーっとする、とにかくやりたいように過ごすのだ。

ドイツと日本は共通点も多いが、仕事に関する考え方は異なる。日本では生きる=仕事という考えが強いが、ドイツでは生きること=生きること、仕事=仕事だ。仕事は効率よく進め、毎日を存分に楽しむ。

私もこれにならい、仕事を詰め込まず、早めに切り上げる様にした。すると、格段と頭がクリアになった。考える時間が増え、研究のアイデアや解決法がふとしたときに湧いてくるようになった。そうした余裕が、20世紀ドイツで量子力学等の諸現代科学が生まれ、発展してきた背景なのかもしれない。

(ドイツ在住、博士研究員)

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