東京・大阪ともに原告敗訴確定/高校無償化訴訟、「除外は適法」最高裁
2019年09月02日 12:21 主要ニュース 民族教育学園、生徒らの上告棄却
朝鮮学校を高校無償化制度の指定対象から外したのは違法だとして、東京中高高級部の卒業生61人(提訴時は62人)が国に対し国家賠償を求めた訴訟で、無償化除外を「適法」とした原告敗訴の判決が確定した。最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は8月27日付の決定で、卒業生らの主張を退けた1審判決(17年9月13日、東京地裁)、2審判決(18年10月30日、東京高裁)を支持し、上告を棄却した。
一方、大阪朝鮮学園が原告となり国に対し高校無償化制度の施行規則に基づいた指定の義務付けを求めた大阪無償化訴訟で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は、同日付で原告の上告を棄却する決定を下した。これにより、東京と同じく大阪でも原告の敗訴が確定した。
大阪では、大阪地裁が17年7月28日、大阪朝高を対象外とした国の行為は違法、無効であると認定し、不指定処分の取り消しと同校を指定対象に含むよう命じる原告側の全面勝訴判決が出たものの、昨年9月27日の控訴審(大阪高裁)では、その一審判決を取り消していた。
高校無償化訴訟と関連し最高裁決定が出るのは今回が初。日本政府による朝鮮学校を指定対象とするための「規定ハ」削除という省令改悪に対し、それを断罪すべき司法は、ついにその役割を放棄する不当判決を下した。
最高裁判決を受け、8月28日、東京無償化弁護団が声明を発表した。以下、要旨。
(朝鮮新報)
東京無償化弁護団の声明(要旨)
東京高裁は、行政処分の効力発生時において存在しない法令に基づく行政処分を有効と解したが、これは明らかに、最高裁判所の判例に相反し、法令解釈を誤ったものだ。当弁護団はこの点の違法性を明確に主張した。
しかし、最高裁は、具体的理由を何ら述べることなく生徒らの主張を退け、判例に明確に相反する東京高裁の判断を放置した。
最高裁決定は、下級審の誤りを是正し、法令解釈の統一を図るという最高裁の職責を果たさず、また、行政による違法な行為を是正するという司法府の役割を放棄したものだ。
弁護団は、本最高裁決定に断固として抗議する。
最高裁の決定が維持した東京高裁判決は、朝鮮学校が指定のための要件を満たさないとの「疑い」があることを理由に朝鮮学校を不指定にした文部科学大臣の判断について、「裁量権の逸脱・濫用はない」とした。しかし一方で、東京高裁判決は、朝鮮学校が指定のための要件を満たしていないと積極的に認定したわけではない。
本訴訟の審理の過程では、下村文部科学大臣(当時)が、高校無償化法の趣旨・目的に反して、「拉致問題等があり国民の理解が得られない」との政治的外交的理由から、朝鮮学校指定のための根拠規定をあえて削除して、不指定処分を行った事実経過が明らかになった。
また、下村文部科学大臣が、朝鮮学校指定の可否を教育的観点から議論していた「審査会」の審理を打ち切り、自民党が野党時代から主張していた「朝鮮学校排除」の規定方針にもとづいて不指定処分を行ったことも明確になった。
私たち弁護団は、改めて、朝鮮学校のみを排除した文部科学大臣の不指定処分に対して抗議の意思を表明する。
高校無償化法は、「家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」 ことを目的とするものであり、同法のもとでの就学支援金制度は、各種学校認可を受けた全ての外国人学校を対象とするものだ。
私たち弁護団は、高校無償化法の趣旨・目的にのっとり、一日も早く、朝鮮高校を就学支援金制度の対象とすることを求める。