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〈それぞれの四季〉アイデンティティとの向き合い方②/黄純実

2019年08月20日 14:14 コラム

“国籍は生まれた国のこと”。少なくともフランスではこれが常識で、変えようとしない自分はただ単に意地っ張りで頑固なだけではないかと、自己嫌悪に陥ることもしばしば。

それでも私は、変えない決断をする。

「民族心」が理由の一つだ。幼稚班から高級部まで民族教育を受けながら培ってきたものを簡単に変えることはできない。

でも、この理由だけなら、私は国籍を変えて楽な道を選んでいるだろう。国籍に囚われずとも、しっかり芯を持っている人たちがいるからである。

しかし、私の場合、国籍を変えるということは「妥協への一歩」である。一つの事柄を妥協してしまうと、すべてを妥協してしまう。一度甘い味をしめたら、より便利な方に進むために大事なものを切り離し、全てにおいてこだわることをやめ、たった一つの妥協が無秩序を生んでしまう。

国籍を変えたら確実に楽にはなる。だが、無秩序な生き方が私に幸福をもたらしてくれるだろうか。

これはあくまで私の見解で、アイデンティティとの向き合い方は人それぞれだ。

利便性から国籍を変えた方々を責めるつもりは毛頭ない。

それでも、私は常に本当の幸せを守るために最後まで自分のアイデンティティと向き合っていきたい。

(パリ、音楽院生)

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