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〈取材ノート〉空虚な発言

2019年07月25日 11:25 コラム 歴史

先月28日、熊本地裁は、国に対し、ハンセン病元患者の家族541人に計3億7675万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。元患者に対する誤った国策で差別を受けたとしてその家族たちが起こした集団訴訟。家族の被害に対し、国の賠償を命じる初の司法判断となった。1907年、「癩(らい)予防ニ関スル件」の制定以降、国の隔離政策で社会からの孤立を強いられた元患者のなかには、多くの在日朝鮮人患者が居た事は周知の事実だろう。

今年3月に出版された金貴粉著「在日朝鮮人とハンセン病」では、この病が、「らい菌による慢性の感染症であるが、その感染や発病には生活環境が大きく影響する」とし、その理由について「日本帝国主義の過酷な収奪によって、朝鮮民衆の生活が低く押し下げられていた」とする山田昭次氏の著書に言及。そのうえで「病との闘いだけではなく、日本の誤ったハンセン病政策に対する闘い、ハンセン病患者への差別・偏見との闘い、そして朝鮮人であるがゆえの日本人社会との闘いを強いられてきた」と在日朝鮮人患者が置かれた処遇について指摘した。

地裁判決を受け、日本政府は控訴見送りに関する首相談話を発表。これに先立ち、安倍首相は、党首討論会(3日)の場で「患者や家族の皆さんは人権が侵害され、つらい思いをしてこられた。我々は、本当に責任を感じなければならない」と発言した。

これほどにも空虚な発言はない。在日同胞らに対し、排他的な政策のもと人権侵害を繰り返す政府代表の言葉には、根本から解決しようとする姿勢は微塵も感じられない。

(賢)

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