学校への思い、歌に乗せ/同胞青年らが「ウリハッキョ応援チャリティーライブ」
2018年12月05日 09:59 文化 民族教育「あなたにとって『ウリハッキョ』はどういう存在でしょうか」―
12月3日、大阪市内のライブハウスで行われた「ウリハッキョ応援チャリティライブ」。会場いっぱいに集まった50余人の観客に向かい、宋知香さん(21)はそう問いかけた。
ライブは、今年起きた災害により被害を受けた朝鮮学校を支援しようと、在日同胞青年たちが行ったもの。今年10月21日に第一弾のライブが行われ、今回が2回目の開催となった。
朝大研究院で学びながら、学生シンガーソングライターとしても活動する宋さんは、「もともと学校支援に強い関心があったわけではなかった」と振り返る。
今年起きた台風や7月の西日本豪雨により、各地の朝鮮学校は大きな被害を受けた。
それに対し、様々な地域、団体から多くの支援が寄せられ、被災した学校への寄付活動が精力的に行われた。朝大の研究院でもまた、豪雨被害を受けた和歌山初中に対する募金活動が行われていた。宋さんもその活動を知ってはいたものの、初めは身近なものとしては捉えていなかったという。
考えが変わったきっかけは、SNSで学校の被害状況を見たことだった。
大きな被害を受けた学校の写真を見ながら「自身の無関心さ」に気付き、自分にできることは何かと考え始めたという。
そんな時、以前から交流のあった同い年の申姈瑟さん(21)と話し合い、「今、自分たちができることをやろう」とチャリティライブを行うことを決めた。
宋さんが運営を担った東京での第1弾に続き、今回は申さんが企画・運営を請け負い、申さんの地元、大阪で開催することになった。
和歌山の朝青員としても活動する申さんは今年、音楽イベントの企画、運営などを学んでいた専門学校を卒業し、社会人になったばかり。自分の手で音楽イベントを開催するのは初めてで、「赤字になったらどうしよう、そんな不安と重圧しかなかった」と吐露する。
しかし、好きな言葉は金大中元大統領の「行動する良心たれ。行動しない良心は悪の味方だ」という申さんは、イベント開催の決意を書き込んだメモを毎日見ながら、「後輩たちが民族を学ぶ場を守りたい」との一心で動き続けた。
そんな申さんの熱意を周囲の人たちもサポートした。
イベントの趣旨に賛同した大阪朝高卒の李由理さん(29)、在日同胞アーティストのゆしんさんが出演を引き受け、専門学校時代の教員が会場の費用を受け持つなど、開催に当たって多くの人から助力を受けた。また、当日の会場には「火曜日行動」などで、普段から申さんと一緒に朝鮮学校への支援活動を行っている朝・日、南朝鮮の支援者たちが数多く訪れ、朝青員、留学同時代の友人たちも足を運んだ。
申さんは、「何よりも人の温かさを感じた。自分だけじゃなく、出演者、観覧者たちみんなの力で作り上げたチャリティライブだった」と話す。
イベントでは3人の出演者らがそれぞれ「声よ集まれ歌となれ」の他に、朝・日の楽曲を情感たっぷりに披露。最後には3人のコラボが会場を盛り上げた。観客はライブを楽しみながら一体となって手拍子を送り、歌い手を暖かくサポートした。
「いろんな背景を持った若いアーティストたちが、歌を通じて学校への思いを伝えようとする姿に心が震えた。本当に行って良かった」と語るのは和歌山初中の保護者、金ソンイさん(39)。SNSでイベントを知り、若い世代の新しい試みへの関心、豪雨被害の時に和歌山初中に寄せられた多くの支援への感謝の気持ちで会場に訪れたという。「歌はこんなにも力を与えられるものなのか」と驚きながら「学校を取り巻く情勢は難しいけど、歌から希望をもらった。次があればまたぜひ見に行きたい」と話した。
「火曜日行動」に参加している西風真奈美さん(60)も「困った人を救いたいというイベントの趣旨は素晴らしい。このような活動がどんどん広がってほしい」と感想を述べた。
第1回チャリティライブの利益は全て被災した朝鮮学校に寄付され、2回目となった今回の利益も前回と同様に、被災した学校に寄付される予定だ。また、2月1日には横浜での3回目のライブが予定されており、今回のイベントに参加したある同胞からは「自分の地域でも開催してほしい」と新たな依頼が来ているという。
申さんは「このような音楽を通じた朝鮮学校支援の活動がもっと広がっていってほしい」と期待を込める。
宋さんは「自分が音楽を始めたのは、朝大の軽音楽団が好きだったから。学校で習った音楽が自分の大きな部分を占めるし、音楽をしている今の自分は朝鮮学校なしにはありえない」と思いを述べ、「これからも『ウリハッキョ』を支える一人でありたい」と語った。
(金孝俊)