〈東京無償化裁判〉宿題課された国、理論矛盾露呈する/控訴審第1回口頭弁論
2018年03月22日 14:10 主要ニュース 民族教育朝鮮学校を高校無償化制度の対象から外したのを違法だとして、東京朝鮮中高級学校高級部の生徒(当時)が、日本国に対し国家賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が20日、東京高裁(阿部潤裁判長)で行われた。
昨年9月、原告側の敗訴という不当な結果でおわった一審の東京地裁判決から約半年、高裁前には、あいにくの雨模様にも関わらず、同校の在校生や学校関係者、支援者をはじめ500人を越える人々が傍聴席を求め列をなした。
地裁判決後、原告側弁護団では、ただちに控訴状を提出(2017年9月25日)。その後、12月に「規定ハ削除の違法性について検討しなかった地裁の誤り」などが含まれた控訴理由書を、期日直前の今月13日には、規程13条と関連し同校で「私立学校法・教育基本法の法令に基づく適正運営がなされていることを示した鑑定意見書」など追加準備書面を提出していた。
この日の弁論は、開廷後すぐに、国側への詳細な指摘から始まった。
そもそも国からの不指定通知では、①ハの削除、②13条不適合という順序で不指定の理由が示されていたにも関わらず、その後、原告の異議申し立てに対する国側の弁解は、「規定ハの削除にかかわらず認めるに至らなかった」と回答していることを指摘。
さらにはその後、提訴前に行われた原告側からの質問に、国は、①13条不適合、②ハの削除と不指定の理由を述べたことに「理由の順番がひっくり返っている」と指摘しながら、「裁判に至っては国は『主たる理由は13条』とまた主張が変わっている。これはどう理解すべきか」と、国側の主張する理論矛盾について、問いただした。
そのうえで阿部裁判長は、「不指定理由とした2点がどのような関連性があるのか論理関係の根拠を明確に示しなさい」としたうえで、最後に国側へ「言っていることがわかりますか」とたずねると、傍聴席からは笑いがおこる一幕も。
また弁論では、国側が、不指定を決定した当時の文科官僚の陳述書を提出したにもかかわらず、原告側がその官僚の証人申請をすると、その必要はないという意見書を出したことに触れながら、「民事訴訟の原則からして、陳述書を出しておいて証人として呼ばないのは考えられない。陳述書の意味はなにか」と裁判長がたずね、被告側弁護団が口を濁す場面もあった。
その後、原告側代理人(弁護団)による意見陳述では、佐野通夫・こども教育宝仙大教授へ依頼した鑑定審査にもとづき準備された鑑定意見書を踏まえ、規程13条に適合する適正運営がなされていることを主張。
弁論は、裁判長による国側への尋問ともみえる質問が多くを占めるなか、およそ1時間におよんだ。
閉廷後の報告集会で発言した原告側弁護団の李春熙弁護士は、「裁判所が問題の本質をやっと理解し、改めて議論しようという気概を感じた」としながら「少なくとも、ハの削除について裁判所が問題意識を持っていることは間違いない。主な宿題は国側に投げられている。次回期日まで気を緩めず頑張りたい」と決意をあらたにした。
本件控訴審の第2回口頭弁論は、6月26日15時から行われる予定だ。
(文・韓賢珠、写真・李鳳仁)