〈月間平壌レポート 1月〉ふたたび動き出した北南関係
2018年02月01日 13:47 主要ニュース 朝鮮半島平昌五輪、軍事会談、本格的な進展に期待
【平壌発=李相英】年初から北南関係が急転直下の進展を見せている。金正恩・朝鮮労働党委員長の「新年の辞」をきっかけに、北側の平昌冬季五輪参加、軍事会談開催など一連の合意が矢継ぎ早に結ばれた。
分かれ道のない北南関係
「新年の辞」を皮切りにした関係改善への一連の動きは、まさに電撃的と言うべきものだった。1月9日には2年ぶりとなる北南高位級会談が開かれ、平昌冬季五輪への選手団、応援団、芸術団などの派遣、軍事的緊張状態を解消のため軍事会談の開催、接触と往来、交流と協力の活性化、各分野の会談開催などで合意した。9日の高位級会談に続いて、15日には北側の芸術団の派遣問題を話し合う実務会談が、そして17日には平昌五輪参加全般について協議する実務会談がそれぞれ板門店で開かれた。
17日の会談を現地で取材した。
板門店の北側地域から軍事境界線を越え、南側の施設「平和の家」へ。北南会談を取材するのはいつ以来だろう―。記憶の糸をたぐり寄せると、2007年5月にソウルで行われた第21回閣僚級会談に行き着いた。同年に2度目の首脳会談と10.4宣言という大きな成果はあったが、その後を受けた李明博、朴槿恵両保守政権の間に、継続的な対話や交流は途切れた。
会談冒頭、北側代表団の田鐘秀団長は、9日の高位級会談から1週間ぶりの再会となった南側代表団の千海成次官に言葉を向けた。
「せき止められていた水門が決壊すれば、そのぶん水の流れも速く強いもの。せっかくいいスタートを切ったのだから、分かれ道のない北南関係を作っていきましょう」(田)
「同感です。平昌五輪、パラリンピック参加問題に限らず、ひいては南北関係の発展、朝鮮半島の平和定着に寄与できるよう南と北が力を合わせていきましょう」(千)
「人が通れば、そこに道はできる。その道をより大きく、広くしていきましょう」(田)
「互いの立場を尊重して理解するという土台の上で議論すれば、むずかしい問題も必ずや解決できるはずです」(千)
9時半から始まった会談は20時に終了。開会式での合同入場や女子アイスホッケーの単一チーム結成、馬息嶺スキー場での合同練習や金剛山での合同文化イベント開催など11項目の合意を盛り込んだ共同報道文が採択された。
前述の実務会談から1週間後の24日には朝鮮民主主義人民共和国政府、政党、団体連合会議が平壌市内で開かれた。「新年の辞」で示された一連の北南関係、祖国統一分野の課題をいかに遂行していくかを議題にして開かれたものだが、年初から朝鮮半島情勢が進展する中、この会議を通じて果たして何を訴えるのかに注目が集まった。
今回、注目されるのは、南朝鮮当局に対して、米国との軍事演習を「延期」するのではなく、「永遠に中断すべき」だと呼びかけたことだ。「北南関係を改善し、統一への突破口を開くため」の課題として、まず北南間の軍事的緊張状態の緩和と朝鮮半島の平和的環境の整備を挙げ、上記のように主張した。これは、米国と南朝鮮が毎年恒例の合同軍事演習を平昌五輪開催期間中には行わないことで合意したことを念頭に置いたものだが、朝鮮半島の軍事的緊張を激化させる演習を「延期」ではなく「永遠にやめるべき」という北側の姿勢は明快だ。
実感した科学技術重視の姿勢
金正恩委員長の新年最初の現地指導先は国家科学院だった(1月12日発朝鮮中央通信)。金正恩委員長が年初に国家科学院を訪れるのは、2014年以来2度目だ。16年の元旦には科学技術殿堂の竣工式に出席している。朝鮮が科学技術重視の政策を全面的に打ち出してから久しいが、今年初の現地指導先が国家科学院だったのもこの科学技術重視のスタンスの象徴的なあらわれだといえよう。
科学技術殿堂は、電子図書館としての機能以外に、科学技術の社会的な普及を担う拠点としての役割も期待されている。趣向を凝らした展示の数々は、人類の英知がつまった科学を身近に感じさせ、自国がなしとげた科学技術分野における成果をわかりやすく伝えてくれる。
大学生や研究者といった大人以上に、子どもたちの姿が目立った。単なる見世物やアトラクションでは終わらない社会的意義を持った施設のコンセプトに、近年の朝鮮の変化の一端を見た気がした。
(朝鮮新報)