朴槿恵政権の崩壊と今後の行方(上)/北川広和
2016年11月25日 10:32 主要ニュース朴大統領下野要求の要因/民衆の闘いとオバマ政権の意向
大統領・朴槿恵はいままさにその座を追われようとしている。本稿では、なぜこうした憂き目を見るに至ったのか、背景を探ることにしたい。そして、支配層は保守政権延命のためにどんな術策をとり、また今後とろうとしているのか、さらに、新たな政権はどうなるのか、どうなるべきなのか、次稿以降で明らかにしたい。
労働者・民衆の闘いで退陣へ
今回の朴大統領辞任劇に関しては「数奇な運命」や「孤独な人生」、あるいは「韓流ドラマの再現」などとする同情的で傍観者的な見方がある。しかし、現実には、朴大統領みずから犯した数々の悪政・悪行に対して労働者・民衆が怒りを爆発させ、「下野せよ」との厳格な審判を下したことが本源的な要因である。
大統領選挙時に掲げた公約は、2013年2月の朴政権発足から半年足らずで頓挫している。高齢者への月20万ウォンの支給も、大学生の授業料半額化も、保育園の無料化も、すべて空約束に終わった。これも公約違反の財閥優遇政策により、労働者の賃金は上がらず、労働条件は悪化し、非正規が増え、失業率が高まった。とくに、青年労働者の失業率は公式統計でも10%を超え、若者たちは就職も結婚も家も諦めざるをえない悲惨な状況に陥った。
これに対し朴政権は「青年層の雇用拡大策」と称して、昨年「労働市場改革法案」を国会に上程した。しかし、法案の実態は非正規雇用の拡大や一定年令に達した労働者の賃金引き下げなど労働者の生活をさらに苦しめる法案でしかなかった。民主労総と韓国労総が今年9月から10月にかけて久々に合同でゼネストを敢行し、現代自動車労組が大幅賃上げを獲得するなど多大な成果を勝ち取ったが、これも朴政権を退陣に追い込む闘いの一環にほかならない。