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〈それぞれの四季〉小さなチョンジャ(東屋)/康貞奈

2016年11月02日 15:45 文化・歴史 コラム

東京中高に小さなチョンジャがある。老朽化のため17年前に新校舎に建て替える際、設計図に伝統的な朝鮮家屋の特徴であるアンマダン(中庭)がイメージされ楼閣が描かれていた。異国で本国の息吹を感じる様にと日本の設計士の提案だった。建設委員たちは口々に「一世は今よりもっと苦しい時代に子どもたちのために学校を建てたのだから、2世の我々はその思いを引継ぐ意地を見せたい」と奮闘した。空き地にL字の校舎を建てて仮校舎費用を削減した。亭子が削除されないように青雲亭と名づけ、懸版は私が書くと申し出た。

言語から受ける情操は不思議。記憶は言語なのだ。アンマダンで幼い頃を思い出した。

お正月に父お手製の朝鮮凧に故郷のハルモ二宛の絵手紙を糸に結び、凧まで届いたら手紙が伝ったことにする歳拝の凧揚げで遊んだ。そして故郷の家の話を聞いた。

いつか帰郷するつもりの一世。解放後まずウリマル教室を開設。失われた母国語を取り戻すための文化活動が民族教育なのだ。過酷な歴史を生き抜いた同胞の祈りと真心で70年行われた朝鮮学校は在日同胞の無形文化遺産と言えるのではないだろうか?

2世同胞達の至誠で竣工した新校舎は美しかった。少数派として生きる子どもたちにとって低学年の頃の、びのび過ごした楽しい思い出が母語で繋がる心の故郷になるのかも知れない。思春期に心ときめいた友人と卒業後に青雲亭で再会するのも乙なものだ。懸版は未完のままだが。(書道家)

 

 

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