〈朝鮮大学校創立60周年・世代を超え活躍する人々 8〉福岡初級校長・趙星来さん
2016年10月03日 16:17 主要ニュース 民族教育“民族教育の明日のために”
民族教育がその産声をあげて今年で70年。1世たちの手でつくり守られてきたウリハッキョには、その場を巣立っていく生徒たちとともに、1945年に各地で国語講習所が設立されて以降、時代ごとに、異国の地で民族文化を紡ごうと教壇にたつ教員たちの姿があった。なかでも卒業生の大多数が教員となる朝鮮大学校教育学部では、これまで民族教育の現場が求める教育者、芸術分野の専門家を数多く輩出してきた。
現在福岡初級で校長を務める趙星来さん(47)。師範教育学部3年制師範科(当時)で学んだ同学部3期卒業生だ。
「君は教員になったほうがいい。民族教育の発展を担う師範科でよく学び、九州の地へ戻ってきなさい」。高級部時代、進路指導をする担当教員からの一言に、「ストンと胸に入るものがあった」と、85年4月に新設された3年制師範科への入学を決めた。教育に情熱を傾ける、福岡初級の校長だった父の無言の背中を見ながら育った趙さんに迷いはなかった。
87年に入学。自転車に乗って奥多摩の渓流に行き俳句を読んだ日本語の授業や、大人数の学部に負けじと頑張り準優勝した学部対抗サッカー大会「学長杯」。蒸し暑い夏の日には、布団を手に寄宿舎の屋上で同級生たちと寝るなど思い出は尽きない。なかでも、一番記憶に残っているのは、当時クラスの担任だった中央教育会の具大石会長らと卒業前に行った祖国講習。
「講習中悩んでいた自分を部屋に呼び、具先生は『これを食べれば疲れがとれる』と、餡ドーナツを準備してくれて、一緒に食べた。普段は、『お前はだめだ』と指摘する、ストレートで厳格な先生だった分、学生の変化に気づき真正面から接してくれる温かみがありがたかった」