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〈取材ノート〉“近くなるべき存在”

2016年10月07日 18:54 コラム 歴史

取材ノート今夏、北海道で行われた「東アジアの平和のための共同ワークショップ」を取材した。97年から続くワークショップでは戦時下の強制連行犠牲者の遺骨発掘が行われてきた。

南の学生が参加者の大半を占め、在日同胞の生活や南北関係、歴史問題と昼夜話題が尽きない、楽しい3日間だった。言葉が通じ、情が通い合う喜びを噛みしめながらも、その話題が朝鮮半島の統一に及ぶと、お互いの認識の違いに祖国分断の年月を感じた。

ある参加者は別れ際、「私が見ることのできなかった、見えなかった日本に住む同胞たちの姿が見え、それは私に新しい大事なきっかけをくれた。また必ず会いましょう」とぎゅっと筆者の手を握った。気持ちは同じだった。しかし、南に住む彼らと、日本に住む筆者を隔てる壁は大きい。南の「国家保安法」下では連絡をとることすら難しく、朴槿恵政権下では誰であれ、いとも簡単に「従北」のレッテルを貼られてしまう。

数日後、北海道での日々を懐かしむ筆者のもとに参加者から一通のメールが届いた。

「現実の壁は高く、険しく、厚いでしょう。でも今、多くの人たちがその壁を越えるために努力しています。私たちはお互いに違う点が多いけれど、それ以上に同じ点も多く、これからもっと近くなるべき存在です」

民族の分断の根本にある植民地支配の歴史。過去を共に見つめる中で生まれた小さな芽吹きを大事にしたい、そう感じた。

(宥)

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