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〈取材ノート〉人間の温かみ

2016年05月11日 13:59 コラム

4月19日から5月3日まで熊本地震の取材にあたった。地震の被災地に足を運んだのは、今回で2回目。昨年8月には、その4ヶ月前にマグニチュード7.8の地震が発生し、8000人以上が犠牲になったネパールを一人旅した。

首都のカトマンズ市街では、古い家屋や歴史的建造物は見るも無残な残骸となっていた。空き地では住居を失った多くの人々がテント暮らしを強いられていた。生活物資が不足し、支援隊による復興活動は進まず・・・。旅人の目には人々のストレスがいつ爆発してもおかしくないように映った。取材ノート

現地には以前、日本で取材したことのある同胞家族が一時的に移り住んでいた。彼らの力も借りながら被災者に話を伺った。

聞けば、被災者たちは苦しい中でも食料や物資を分け合いながら日々を過ごしているという。家が無くなれば友達の家で同居し、壊れた自宅の家財を他人の家の普及作業に充てることもある。懸念されていた略奪や暴動も見られなかった。互いの良心が触れ合う中で、人々の胸の内には多少の精神的余裕が生まれていた。

同胞がふと口にした言葉を今でも鮮明に記憶している。

「どこか同胞社会に似ているよね。助け合いの精神が根づいているんだよ」

熊本での取材期間、各地から寄せられた慰問金と支援物資を受け取った同胞たちは、感極まり何度も感謝の言葉を述べていた。苦境に立たされた時、何よりも心に響くのは人間の温かみであった。

(徳)

 

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