1世の肉筆原稿を2世が出版/後代に民族の心と誇り伝えたい
2015年04月09日 15:36 主要ニュース 文化・歴史呉南現著「ウリマルと漢字学習本」、金光成著「君と私の祖国」
表紙に雄大な白頭山の天池と漢拏山の白鹿潭の写真をあしらった2冊の在日生活読本が出版された。一冊は呉南現著「ウリマルと漢字学習本」(A4版636ページ)、もう一冊は金光成著「君と私の祖国」(A4版153ページ)である。
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「ウリマルと漢字学習本」は、在日1世の教育者である呉南現さん(84)が、異国で生活する若い世代の同胞たちに向けて「朝鮮語の乱れを正し、本国の人たちとも分かり合える母国語を取り戻すため」にまとめたもので、「朝鮮語学習資料」(1994年8月編)、「朝鮮語語源選」(1996年7月編)、「漢字知識」(1994年7月編)の3つの章で構成される。
1931年、済州島西帰浦市で生まれた呉さんは、10歳のとき、大阪で工場を営んでいた父を頼って玄界灘を渡った。戦争の狂気が人々の生活を容赦なく蝕む中、44年に空襲を逃れて再び海を渡った呉さんは、忠清南道公州で解放を迎える。喜びもつかの間、朝鮮の解放は日本との断絶へと結びつき、日本にある父の工場からの送金が途絶えると、たちまち生活は苦しくなった。呉さんは、済州島から大阪、公州、仁川、そしてソウルへと生活の場を移しながら、再び日本へ渡ることとなった。48年のことだった。同年、東京中高高級部に入学。多くの学友たちが朝鮮語に不慣れであったのに対し、朝鮮暮らしが長かった呉さんの発音はネイティブそのもの。文章力も抜群で、教員たちは呉さんに一目置いていたという。その後呉さんは50年12月に滋賀県の民族学級で教職についたのをきっかけに、教育者としての人生を歩むことになる。