被告側の根拠の乏しさ指摘/広島「無償化」裁判第6回口頭弁論
2015年03月03日 09:50 主要ニュース広島朝鮮学園と広島朝鮮初中高級学校生徒・卒業生たちが「高校無償化」法に基づく指定の義務付けと、「無償化」制度から排除された生徒への国家賠償を求めた裁判の第6回口頭弁論が2月25日、広島地裁第302号法廷で開かれた。広島初中高の生徒・保護者や学校関係者、日本市民で傍聴席は埋まった。
被告である日本国側は今回、第5準備書面を提出。前回裁判所から求められた、朝鮮民主主義人民共和国や総聯による朝鮮学校への「不当な支配」の問題に関して釈明した。被告は、一般的に私立学校や外国人学校が特定の団体や本国等から支援を受けるなどして一定の影響を受け、関係性を有することはありえるが、その自主性を歪めるようなものであれば、それが「不当な支配」に当たると主張。これに関し裁判官は法廷で、被告が主張する「支配」の内容が「不当である」と指摘できる根拠はあるのかと指摘した。
原告側代理人の平田かおり弁護士は、イ、ロ、ハ号のうち、朝鮮学校が含まれるハ号にのみ財務関係を含む学校運営の適正という規定が求められる点において、「他の外国人学校と朝鮮学校の違いについて釈明を求めていたが、被告の準備書面では明確にされていない。主張は書面の内容に尽きるのか」と糾した。
また原告側は、今回提出した証拠について説明。平田弁護士は朝鮮学校の「高校無償化」除外に関する内容の朝鮮学校生徒らの作文を読み上げ、「日本の社会的環境を背景にした、朝鮮学校生徒たちの悲痛な声があらわれている」と主張。足立修一弁護団長は、昨年の国連人種差別撤廃条約審査で、朝鮮学校「無償化」問題に関して委員から日本政府に繰り返し質問がなされたことについて言及した。
裁判終了後、広島弁護士会館で報告集会が行われた。
足立弁護団長は、裁判官が「不当な支配」の根拠について釈明を求めたのはまっとうであり、これに対して被告側はまったく議論できていないと指摘。裁判所が原告側の主張を理解した上での質問であったと評価した。
松岡幸輝弁護士は、法廷で裁判官がハ号を削除した違法性と、違法とした場合、朝鮮学校を不指定とした違法性についての分析を明らかにするよう求めた点について、「論点を焦点化してほしいということで、今後は細かい論点からより大きな論点で裁判が争われていくだろう」と見解を述べた。
最後に質疑応答が行われ、会場からは「国連勧告をもって被告に揺さぶりをかけることはできるのか」「日本市民が裁判を支援していることを裁判所にどう示せるか」といった質問が出された。
この春、広島初中高を卒業する原告生徒は、「高校3年間、『無償化』適用を求めてたくさんの運動に取り組んできたが、状況は変わらず、私たちの存在が認められないまま卒業することが腹立たしく、悲しい。卒業しても裁判のいち原告として、広島朝高の卒業生として、勝利までたたかっていきたい。卒業後は朝鮮大学校に進学するが、金曜行動などにも積極的に参加し、裁判運動に取り組んでいく」と話した。
次回第7回口頭弁論は、5月13日に行われる。
(金淑美)