〈本の紹介〉闘う平和学-平和づくりの理論と実践/前田朗、木村朗、加藤朗共著
2014年05月21日 14:04 文化・歴史“私たちはどのような世界に生きたいのか”
国家安全保障会議(日本版NSC)の設置、特定秘密保護法の強行採決、集団的自衛権の行使に向け平和憲法を改悪しようと目論む安倍政権。戦争とファシズムの足音はすぐそこまで聞こえている。
「平和はただ願うものではありません。祈っても、憧れても、平和を獲得できるとは限りません」。
本書では平和を作る理論と実践をよりいっそう自覚的に、積極的に、継続的に展開する平和学について3人の著者たちが述べている。
日本にとってもっとも強力なソフトパワーとなった憲法9条。その実践とは、非暴力による、自衛隊に頼らない、軍事力に依拠しない国際社会への協力であると述べる加藤朗氏。原爆と原発の関係性を問い、本当の意味での「核のない世界」とは何かを示す木村朗氏。いろんなレベルでの「権利としての平和」の形を提示する前田朗氏。
「人生のキャリアも学問的背景も異なる3人の朗」が平和づくりの実践について論じる。
「非国家間戦争」、「人道的介入」という名の破壊、「戦争の民営化とゲーム化」。21世紀型の「新しい戦争」にどう立ち向かって行くのか。「『戦後レジームからの脱却』という新たなナショナリズムを掲げた安倍政権」下で「個人の権利としての平和」を再度議論し、情報操作に対抗するメディア・リテラシーを市民の側が独自に身につけることが今日求められている。また、平和的生存権を憲法に掲げているにもかかわらず、明確なる軍事的武装組織を持ち、世界最強の軍隊を持っている米国と従属的な同盟関係を結んでいる日本の矛盾をしっかりと見据えなければならない。
「平和のために行動することがなぜ正しいのか。自らの正義の所在が明らかになって初めて腹の座った平和運動ができるのではないでしょうか。実践できる範囲が自らの正義の範囲であり、その範囲がその人の平和の範囲なのです」。
大きな時代の転換点にあって、私たちはどのような世界に生きたいのか、現在の世界をどう認識し、大多数の国民の声や意思の届かない国家を国民の手で、いかに民主化するべきなのかを問いかける一冊。
(金宥羅)