公式アカウント

〈Sinbo -계승과 혁신- 7月〉私が見た在日朝鮮人社会

2013年07月18日 16:12 主要ニュース

濃いつながりの中で自分らしく生き

助け合い、思いやり

山下善久さん

山下善久さん

2012年2月。豪雪に見舞われ周辺道路が完全に遮断された北陸朝鮮初中級学校(福井市)の校門前には、生徒たちが安全に通学できるようにと除雪作業にあたる人々の姿があった。

その大半が、県内に住む日本市民だ。黙々と雪かきに精をだす彼らの姿に励まされるように、学校関係者や同胞たちが共に汗を流した。

県内で「International club」を運営している山下善久さん(41)が、作業の発起人。「福井の朝鮮学校前の道路はスクールゾーンに指定されてないから、行政からの除雪作業が後回しになって子どもたちが困っていると聞いた。それならば、自分たちがと思った」と当時を振り返る。

昨年の夏には、北陸初中で剪定作業を行った。

昨年の夏には、北陸初中で剪定作業を行った。

山下さんは当初、有志たち2、3人による小規模な作業を想定していたという。しかし、SNSを通じて広く参加を呼びかけたところ20人以上の日本市民が集った。また、当日は学校関係者が炊き出しを行い、生徒たちが民族打楽器を演奏して作業にあたる人々を労った。「本来なら自分たちがすべきことなのに」と、遠方に暮らす卒業生などから差し入れやメッセージも寄せられた。

こうした光景に、当時、山下さんは大きな衝撃を受けたという。「この日もそうだけど、朝鮮学校では卒業式にも、生徒たちを1年しか受け持っていないという元担任や先輩たちが他県からわざわざ駆けつけてくる。在日朝鮮人社会に根づく、この繋がりの濃さって何なんだろうって率直に思った。同時に、きっとこうした強い関わり合いの中でコミュニティを守ってきたから、世代が変わっても子どもたちが在日朝鮮人として生きる誇りを持てるのだと思った。かつて日本社会にもあった他者との助け合いとか思いやりの気持ちが、ここにはまだ色濃く残っているような気がする」

大切な同志

京都市立命館大学に通う馬場一輝さん(21、4回生)は、そうした繋がりの強さを身をもって体感しているという。

馬場一輝さん

馬場一輝さん

きっかけは2009年に見たドキュメンタリー映画「ウリハッキョ」だった。北海道朝鮮初中高級学校を舞台に繰り広げられる生徒たちの笑顔あふれる日常、教員たちの奮闘する姿、また明るいそれとは対象的に朝鮮学校が置かれている厳しい現状を描いた作品だ。当時、登場人物と同じ高校3年生だった馬場さんは「初めて見た朝鮮学校の内実に衝撃を覚えた」と話す。「まず生徒と教員の距離が近いことに驚いた。教員にあれほど心を開き、かつ尊敬する気持ちを忘れない。日本の高校ではありえない光景。実際に彼らに会ってみたいと強く思った」

それから数ヵ月後、馬場さんは自ら北海道初中高に連絡をとり、自費をはたいて同校を訪問した。同級生にあたる高級部3年生の授業を参観し、昼食を共にして交流を深めた。「映像でしか見れなかった彼らが、実際に身近な存在としての認識に変わった。当時は互いに学生同士だったから、いっそう変な距離感もなく同じ目線で物事を捉えて会話を楽しむことができのだと思う」と印象を語る。

北海道初中高生徒たちの前で発言する馬場さん。

北海道初中高生徒たちの前で発言する馬場さん。

あれから4年。馬場さんと当時の生徒、教員たちとの親交は今もなお続いている。馬場さんはこの間、卒業式や運動会などの学校の主要行事に合わせて7度にわたり訪問。生徒や教員が「祖国」と慕う朝鮮にも数回訪れた。

北海道初中高に訪れるたびに生徒たちのみならず、教員、関係者たちとも、自身の人生観、現在の社会問題と関連した意見交換を積極的に行ってきた。馬場さんはその過程で、彼らに共通する考えがあることに気がついたと話す。

「みな同胞社会のためにとか、母校のためにとか、自分だけじゃない誰かのためにこうなりたい、こうしたいと夢や望みを口にする。そういう考え方は、いまの日本社会でなかなかできることではない。だからこそ、朝鮮学校は自分にとって、色んな意味で魅力的な場所だと思っている。日本社会における差別に屈せずに、困難な現状を自分たちの力で打開しようとする姿にも深く感嘆している。国籍は違うし育ってきた境遇も違うけど、同じように自分が自分らしく生きられるような豊かな社会を共に築いていく大切な同志のように思っている。ずっといい関係でいたい」

対等な立場になれるために

高原さつきさん

高原さつきさん

名古屋市に暮らす高原さつきさん(30)もまた、同世代の在日朝鮮人青年たちを「仲間」と感じている。現在は県下における若い世代による日朝友好団体「USM(ウスム)」の共同代表を務めるかたわら、「朝鮮高校にも差別なく高校無償化を求めるネットワーク愛知」の事務局にも所属して活動している。

そんな高原さんのスタンスは「彼らの置かれている状況がかわいそうだから助けてあげているという意識は毛頭ない。日本社会における問題を解決していこうという目標をともにしている」というもの。そうした考えを抱くようになった背景には、在日朝鮮青年たちとのたくさんの出会いがあった。

福岡県出身の高原さんが、在日朝鮮人や朝鮮学校と出会ったのは転職を機に名古屋市に移住してからだった。貧困問題など様々な社会運動に取り組む過程で、在日朝鮮人社会、朝鮮学校、留学同などの各運動団体の存在を知った。

活動を通じて出会った仲間たちと共に。

活動を通じて出会った仲間たちと共に(最後列、右から2人目が高原さん)。

しばらくして「日朝友好愛知学生の会」に所属し、その中心メンバーとして学習会や朝鮮学校支援、交流会などの活動を精力的に展開するようになった。「いつのまにか周囲には在日朝鮮人ばかりになっていた」と振り返る。

とくに活発に交流をしてきたのが愛知県内の朝青員や留学同のメンバーたち。2011年、共に「USM」を立ち上げてからは、食事会など、それぞれの考えや問題意識を共有する機会がいっそう増えた。今ではあだ名で呼び合ったり、くだらないことで口げんかをするほど中が深まっているという。

「在特会による朝鮮学校襲撃、『高校無償化』からの除外など、こうした現状は日本社会全体の問題。声を上げなければ状況は絶対に変わらないし、声を上げないこと自体がそうした風潮に加担することになると思う。何より、そうした状況に抗うために同世代の『仲間』たちが頑張っている。

(周未來)

特集記事一覧

Facebook にシェア
LINEで送る