在日朝鮮青年学生サッカー代表団、朝鮮代表選考会に参加
2013年06月13日 11:13 スポーツ 主要ニュース朝鮮学校中・高級部生徒ら40余人が祖国へ
在日本朝鮮人蹴球協会は先日、今月21日から29日にかけて、朝鮮で行われる年代別(16歳以下、19歳以下、22歳以下)の朝鮮代表選手選考会を兼ねた合同練習に参加するため、「在日朝鮮青年学生サッカー代表団」(団長=李康弘・在日本朝鮮人蹴球協会理事長)を派遣すると発表した。同胞選手が代表団を組んで選考会に参加するのは初めて。
代表団は、朝鮮大学校学生、各地の朝鮮学校に通う高級部生徒と中級部生徒、コーチ陣、役員ら40余人で構成されている。蹴球協会技術部が選抜した選手が名を連ねているという。
選手たちが朝鮮サッカー関係者たちの目に留まれば、今秋から来年初めにかけて行われる年代別の国際大会に朝鮮代表選手として出場する。選手たちが自身の実力を試す絶好の機会であると共に、各朝鮮学校サッカー部が今後選手育成により力を注ぐきっかけにもなる。
蹴球協会ではこれまでも、代表選考会に同胞選手や朝鮮学校の学生らを派遣してきたが、少数だったため、朝鮮国内の独得な雰囲気に呑まれ、なかなか本来の力を発揮できない選手が多かったという。今回は学生チームと朝鮮の国内選手らとの練習試合が組まれていて、そのなかで選考会が実施されるという。
このような措置がとられた背景には、朝鮮蹴球協会と在日本朝鮮人蹴球協会の長年にわたる連携がある。その根底に、在日同胞選手を国内選手と同等に扱う朝鮮蹴球協会の方針があるという。朝鮮学校に通う同胞学生らは、「共に世界でたたかうサッカープレーヤー」だという考えだ。
今回、団長を務める李康弘理事長は、世界の舞台で活躍する同胞選手を育てていくため、日本サッカー協会公認のS級ライセンスを持つ講師による指導員講習、そして選手育成事業に今後も力を注ぎたいと抱負を語った。
朝鮮のサッカー熱
一方、朝鮮スポーツ界は数年前から「サッカー強国」「スポーツ強国」などの標語を掲げ、強化に取り組んでいる。朝鮮のメディアでは連日のようにスポーツ関連のニュースが報道され、国内では新たなスポーツ番組が増え、スポーツ関連施設が次々に建設されている。
李康弘理事長は2009年、朝鮮男子代表が10年W杯南アフリカ大会への出場(44年ぶり2回目)を決めたことで朝鮮国内の雰囲気が変わったと指摘する。サッカーの強豪国になるための国家的な施策が講じられ、選手育成システムが確立されていった。11年1月1日の3紙共同社説には「サッカー強国」「スポーツ強国」という言葉が登場。昨年に国家体育指導委員会(張成沢委員長)が新たに創設され、先月末には「平壌国際サッカー学校」が開校し、国内の有望選手が集められ、国家的な育成システムが確立された。
また、朝鮮国内では人民たちの高い関心のもとで試合が行われるようになった。近年、国内リーグの試合にも観衆が多く詰め掛けるようになり、国内選手たちにとって発奮のカンフル剤になっているという。
朝鮮によるこのような「サッカー強国」構想のなかで、在日同胞選手たちへの期待も大きい。
李康弘理事長によると、朝鮮の「サッカー強国」構想に、在日同胞選手のさらなる活躍が期待されている。W杯出場を決めた後、当時朝鮮代表だった金光浩コーチ(在日本朝鮮人蹴球協会副会長)、安英学、鄭大世選手が「人民体育人」の称号を授与され、本大会で主力として活躍し、朝鮮で高い評価を受けたことは記憶に新しい。そして今回の学生サッカー代表団派遣のように、選手選考会を通じた国内選手と同胞選手との技術交流が行われていくことで、それぞれが学び合い、互いに切磋琢磨するシステムが出来上がっている。
在日同胞サッカー界への朝鮮の期待はまた、金正恩第1書記が観覧した万景台賞体育競技大会の男子サッカー決勝戦(4月末)でも垣間見られた。スタジアムの主席壇に李康弘理事長が招待された。李理事長はそのときの様子について次のように振り返った。
「光栄なことだ。在日同胞、そして在日同胞スポーツ界への深い信任を感じた。金正恩第1書記はサッカーを観覧しながら専門家の解説を熱心に聞いていた。そして、得点後は満面に笑みを浮かべ、激しいプレーで選手が倒れたら心配そうな表情を浮かべていた。スポーツへの造詣が深く、人間味にあふれ、温かさを感じた」
李理事長は、同胞選手が朝鮮代表の一員として、世界で活躍するよう在日本朝鮮人蹴球協会の役割を強化したいと述べ、朝鮮の「サッカー強国」に向けた取り組みに貢献したいと決意を語った。
(李東浩)