事実を歪曲した映画
2013年05月22日 13:49 春・夏・秋・冬現在、「ハナ 奇跡の46日間」という映画が公開されている。1991年、千葉世界卓球選手権でのコリア統一チームの活躍を題材とした劇映画だ。「感動した」という感想を耳にすることが多く、集会などで宣伝チラシが配られていたりもする
▼この映画、昨年に試写会で観る機会があった。筆者も観る前は期待していたのだが、歴史の事実を捻じ曲げた感動とはほど遠い作品だった。「感動した」という感想を聞くたびに戸惑いを覚える
▼劇映画なので、脚色し事実と違う場合があるのはある程度しかたがない。しかし、統一チームが維持され無敵と言われた中国女子団体チームを破る力を発揮したのは、北と南双方の努力があったからこそであり、信頼関係が作られたからだ。映画はその根本の部分を歪曲している。「南の一方的な努力と誠意で統一チームを壊そうとする北を説得し頑なな心を変えさせる」という描き方は、当時共に戦って勝利を勝ち取った選手やスタッフ、そして心を一つにして応援した在日同胞を冒涜するするものだ。北の人々の描き方もステレオタイプでいやらしい
▼統一チームの実現と活躍は、ドラマではなく事実だからこそすべての同胞たちに深い感動をもたらした。事実を捻じ曲げたこの作品が「統一を描いた感動作」としているのは、一種のデマゴーグであり、「北朝鮮バッシング」がもたらした思考の後退そのものと言えるのではないか。(徹)