西東京の活動家と朝鮮学校児童たち、ハンセン病療養所に慰問品届ける
2013年02月21日 10:25 主要ニュース「私も強く生きる、みんなも頑張れ」
西東京で昨年末に行われた「愛の募金運動」で購入した慰問品が13日、国立療養所多磨全生園(東京都東村山市)で暮らす同胞ハンセン病元患者(以下、同胞入所者)たちに届けられた。旧正月に際して行われた慰問活動では、西東京朝鮮第1初中級学校の初級部6年生による公演、同胞入所者との座談会も催された。多磨全生園を今回のような形で活動家や朝鮮学校児童が訪れるのは、今年で11年目を迎えた。
9人の前で公演
同園には現在、26人の同胞入所者がいる。この日、活動家、児童らとの交流会に参加したのは9人だった。高齢者が多く、部屋の外に出られないため全員がそろわなかった。
慰問に訪れた総聯西東京本部の蘇汶炅副委員長、女性同盟西東京本部の李順姫委員長、朝青西東京東部支部の金成俊副委員長をはじめとする西東京の活動家らは、柚子茶、菓子、キムチなどの慰問品と西東京朝鮮第1初中級学校、西東京朝鮮第2初級学校児童たちの手紙と年賀状を同胞入所者たちに手渡した。同胞入所者たちは、「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」などとしながら謝意を表した。
児童たちは、全生園と隣接する国立ハンセン病資料館を訪れ、同園で亡くなった同胞の遺骨が安置されている納骨堂で合掌し、ハンセン病患者として、在日朝鮮人として理不尽な「2重の差別」に苦しんだ同胞の冥福を祈った。
児童たちはこの日、リコーダー合奏「イッツ・ア・スモールワールド」、合唱「陽山道」、リコーダーと合唱「故郷の春」などを披露。同胞入所者らは公演を見ながら、歌詞を口ずさみ、涙を流していた。児童と肩を組み、一緒に歌うハルモニの姿もあった。
その後、同胞入所者は児童たちとの座談会に臨んだ。自らが歩んできた苦難の人生とともに、祖国統一への想いなどについても伝えた。また、朝鮮の現情勢、祖国解放後の歩み、故郷や家族の話などについて話した。児童たちは食い入るような姿勢で話を聞いていた。
「天使の声」に感動
公演中、涙が止まらない様子だった88歳のハルモニは、児童たちの歌声を「天使の声のようだった」と表現した。ハンセン病であるがために子どもを産むことさえ許されなかった差別とたたかってきたハルモニの目は慈愛に満ちていた。座談会を終えると、「あなた、綺麗な娘さんになるはずよ。あなたのような娘さんに育ててくれたオモニに、私からもよろしく伝えてね」と女子児童に語りかけていた。
同胞入所者は園内の同胞組織「互助会」に所属している。責任者を務める77歳のハラボジはこの日、活動家や児童たちにこう激励した。
「ここに来てくれるだけでもうれしいのに、キムチなどを持ってきてくれて、公演まで準備してくれて、本当にありがたい。ここにいるハラボジ、ハルモニたちは、今日この日を一生忘れないだろう。あともう一つ、君たちは祖国統一を見られるかもしれない。統一を君たちが手繰り寄せてほしい。われわれはここで、強く生きるから、みんなもがんばってもらいたい」
子どもの頃から70年間入所していた前責任者が昨年亡くなり、責任者の職を最近受け継いだという。
「堂々と生きたい」
西東京第1初中の教員によると、児童たちは事前学習も含め、今回も多くを学んだという。
崔太成さん(初6)は、同胞入所者との会話そのものが印象深い体験だったと述べ、「ウリナラや故郷への熱い想い、朝鮮地理の話などを聞く過程で、ぼくたちが朝鮮人として、もっと堂々と生きていかねばと思った」と話した。
柳明里さん(初6)は、「2重の差別」を受けてきたハラボジ、ハルモニたちから「堂々と生きてほしい」と激励されたことや、公演を見ながらすすり泣いていた姿が忘れられないと語った。
同胞入所者との交流は現在、西東京第1初中初級部6年生の教育課程案に組み込まれている。「過去を知る」という活動は、児童たちの「学ぶ意欲」につながっていて、取り組みに対する学父母の期待は大きい。
同園を中級部の頃に訪れた裵炯烈さんは現在、西東京第1初中の教壇に立つ。今回初級部6年生の担任として同園を訪れ、「また新たに学んだものがあった。今回はとくに、同胞入所者たちの団結力が、ハンセン病患者への偏見や差別に打ち勝ち、人間としての尊厳を取り戻す上で原動力になったことなど、学ぶべき点が多かった」と話した。
総聯本部の蘇汶炅副委員長は、今回のような慰問が、同胞入所者にとっては喜びであり、児童たちにとっては新たな刺激であり、活動家にとっても大切な空間になっていると話す。
(李東浩)