「在日朝鮮人関係資料室の所蔵資料について」金哲秀室長
2012年07月13日 17:42 主要ニュース7日に行われた朝鮮大学校朝鮮問題研究センター付属在日朝鮮人関係資料室開設記念シンポジウムで行った同「資料室」金哲秀室長の行った報告「在日朝鮮人関係資料室の所蔵資料について」の内容は次のとおり。
1. 「在日朝鮮人関係資料室」開設の経緯
朝鮮大学校の図書館には、これまで様々な経緯で集まった在日朝鮮人関係資料が数多く保管されていた。これらの莫大な資料は、歴代の図書館長をはじめ職員たちが資料の分散を防ぐため整理保存に努めてきた。しかし、全資料目録もなければ、資料保管も劣悪な状況にあり、とても一般に公開し利用できる水準にまでには至らなかった。
このような中で、当大学が所有する在日朝鮮人関係資料の劣化、紛失、分散を防ぎ、一般に広く利用できるような環境の整備は、当大学における長年の懸案事項であったし、内外の研究者、教育関係者からも大きな関心と期待が寄せられていた。
当大学ではこれらの資料が、在日朝鮮人関係の事実を究明する一次史料であるということ、さらに在日朝鮮人運動を開拓してきた在日同胞1世、2世の血と汗の結晶であり、当大学が所有する貴重な財産であるという認識に立ち、2009年4月から在日朝鮮人関係資料室(以下、資料室とする)の設立準備に着手した。そ3年間の準備期間を経て本日の開設に至っている。
資料室開設の目的は、在日朝鮮人関係の資料を収集保存、公開することによって、在日朝鮮人関係の研究ならびに教育に資することである。将来的には事業内容を在日朝鮮人の歴史整理のための史料を収集、保存、電算化、管理、展示、調査及び研究にまで拡大し、在日朝鮮人に関する総合的な研究拠点の構築を目指していきたいと思っている。
2. 所蔵資料について
1)所蔵資料の入手経路
当資料室には、在日朝鮮人関係の文書、パンフレット・ミニコミ誌、新聞・雑誌、ビラ、単行本、写真など11,233件の資料が収蔵されている。
これらの資料は、朝鮮大学校創立以来、当大学図書館が独自に収集したもの、元民族団体活動家個人が所有し後に本人や遺族から寄贈されたもの、当大学付属民族教育研究所から移転されたもの、当大学が生産し各部署に保管してあったもの、布施辰治弁護士の遺族から譲り受けた朝鮮人事件関係取扱記録などで構成されている。また1953年10月創立の中央朝鮮師範専門学校時代に所有していた資料も引き継いでいる。
資料の具体的な入手経路に関しては、書類不備のため確認できていない。一部の資料については直筆サインや捺印から、誰が所有していたものかまでは確認できる。
2)整理の状況
準備期間、多くの大学教員が、段ボール箱にして約150箱分の資料を分類し、資料番号と20項目にわたる資料情報の入力作業にあたった。現在、書誌データ台帳(Excelファイル)の作成を終え、「在日朝鮮人関係資料室目録」を作成中であり、今年秋ごろに発行を予定している。
また、在日朝鮮人関係資料を保管する書庫(約10万件配架可能)及び閲覧室を、当大学「記念館」三階に新設した。
すべての資料は、資料保存用の中性紙封筒に収め、書庫に配架済みである。
3)所蔵資料の分類と配列
資料の分類は所蔵資料の特色を考慮し資料室独自に行った。
大分類はA一般、B教育、C教科書、D朝鮮大学校、E布施辰治関係資料の五種に区分した。分類別資料件数は、A一般が3,226件(28.7%)、B教育4,016件(35.8%)、C教科書826件(7.4%)、D朝鮮大学校1,144件(10.2%)、E布施辰治関係資料2,011件(17.9%)である。さらに小分類をもうけ細かく分類し配列した。
小分類の配列は、朝聯/民戦/総聯/その他の民族団体/日本人団体/国際団体/解放前/その他/の時代順にした。
時代順の配列は、朝鮮語、日本語、英語などの順序になっている。朝鮮語資料は가나다라順、日本語資料はアイウエオ順、英語等の資料はABC順である。
4)所蔵資料の特色
当資料館の特色は、①朝聯(在日本朝鮮人聯盟)、民戦(在日朝鮮統一民主戦線)、総聯(在日本朝鮮人総聯合会)の中央及び各級組織と、その傘下団体から発行された貴重な資料が多数保管されていることである。とりわけ総聯関係の資料が多いこと、会議・方針、組織・宣伝、権利運動に関する文書類が多数を占めること、一部の地域に限られているが地方本部、支部が発行した文書類も収蔵していることが特徴としてあげられる。
②民族教育関係資料が収蔵資料の半数を占めていることである。
③布施辰治弁護士の朝鮮人関係事件取扱記録など原資料が保管されていることである。朴烈氏事件、46年12月事件、朝聯と民青解散、三鷹事件、松川事件、平騒擾事件など布施辰治弁護士が係った在日朝鮮人関係文書などがある。
3. 資料の検索と資料室の利用方法
1)資料の検索
すでに配架済みの書誌データは「在日朝鮮人関係資料室目録」で検索することができる。オンラインでの検索システムは構築していない。今後の課題である。
2)資料室の利用方法
・利用資格者
1. 朝鮮大学校の教職員、学生
2. 朝鮮大学校の卒業生
3. 朝鮮問題研究センター長が認めた者(外部の利用申請者は公共図書館の閲覧申請書を事前に本センターに送付し、センター長が承認の判断をする。)
・開館日及び休館日
下記の休館日を除き開館する。
1. 当大学の年間日程で定めた休日に準ずる。
2. センター長が指定した日
・利用時間
平日9:30~12:00 / 13:00~17:00
土曜日9:30~12:00
・問い合わせ=朝鮮大学校朝鮮問題研究センター付属在日朝鮮人関係資料室(TEL. 042-346-0414、Eメールアドレス=kucks@korea-u.ac.jp)
(朝鮮新報)