〈取材ノート〉温もりに包まれた日々
2012年05月22日 11:34 コラムおしゃれなコートを羽織り、ハイヒールをコツコツ鳴らしながら、携帯片手に道端を闊歩する女性。手をつなぎながら大同江のほとりを散歩するカップル。日本のメディアが伝えない人々の姿があった。
記者は4年ぶりに平壌を訪れた。平壌支局での初取材は朝青イルクン代表団の随行取材だった。北海道から九州までの98人の専従、非専従活動家たちと7泊8日をともにし、様々な場所を訪れた。急ピッチで発展していく祖国の姿に代表団一同、驚きを隠せない様子だった。
万寿台地区の超高層アパートなど、建設ラッシュが続く平壌。観光マップを広げ、市内各所を巡った朝青イルクンたちは、「こんなのあったっけ?」と感嘆の声を連発した。日本で思い描いていた祖国のイメージと自分たちが目撃した現実のギャップは、想像以上に大きかった。
しかし、彼らの心に残ったものは、平壌の街並みの風景だけではなかった。いつ訪れても温かく迎え入れてくれる、変わらない祖国の人々の心が一番の思い出だった。朝鮮語はつたない上、見かけも違えば住む場所も違う同胞青年たちを、「本当の家族、兄弟のようだ」と言い、別れ際には涙を流す程の深い情。代表団の中には、はじめて祖国を訪れた人もいれば10回以上訪れた人もいたが、みんなが「母なる祖国」の温もりを全身で感じた8日間だった。そうした交流や体験は、その後の祖国の人々とのふれあいの中でも繰り返された。
そして、1カ月半過ごした祖国の最後の夜、一人温かい思い出に浸りながらペンを走らせた。(梨)