〈取材ノート〉「当事者が本気出さんかい」
2012年03月22日 10:16 コラムテレビドラマ「運命の人」(山崎豊子原作)を毎週見ている。主人公の新聞記者は、「沖縄返還」の裏に隠された日米政府の密約を明るみにしようと奔走する。それを踏み潰そうとする国家権力に抗う「途方もなさ」がひしひしと伝わってくる。
理不尽さがまかり通る世の中は、ドラマに限った話ではないから悲しい。
日本政府は、朝鮮学校だけを「高校無償化」の対象から外した。2期目の「不支給卒業生」が生まれてしまった。
先日、取材した集会の会場では、「当事者」である学校関係者からも「もう無理なのではないか」という諦めの声が漏れていた。ある保護者は、押し寄せる差別と人権侵害の連続、国家権力によって強いられる不条理に、現場は甚だ疲れ果てていると語った。
一方、日本人支援者の輪が広がっていることも確かだ。大阪では、学校関係者と日本の支援者、弁護士らが連係し、適用実現を目指す「連絡会」が発足した。
壇上に立った若き弁護士は「ただ支援のために闘うのではない。より豊かな社会を築こうとする自己実現のためでもある。当事者の皆さん、僕たちを大いに利用してほしい」と語った。
謙虚な主張の裏に「闘い抜く覚悟」が垣間見えた。
ある朝鮮学校関係者はその言葉を、「弱気になってないで、当事者が本気出さんかい。どこまでかましたるんや」という叱咤激励として受けとめた。
「目の覚める思いだ。途方もない闘いに、ともすると諦めがちになるが、当事者の僕らが声を上げなければ」(周)