〈取材ノート〉憧れの「洪吉童」
2012年03月10日 15:38 コラム幼い頃、母方の祖父母の家で、一つの映画に出会った。「洪吉童」。朝鮮王朝時代の腐敗した封建社会の不条理に異を唱え、庶民のために立ち上がったヒーロー映画だ。神出鬼没で悪を懲らしめる主人公のかっこよさは、幼心をとりこにした。以来、何度見たことか。私にとって「洪吉童」は、朝鮮映画の代名詞のような存在となった。
洪吉童役を演じたのはリ・ヨンホさん。朝鮮でもっとも知名度の高い俳優と言っても過言でないほど人気だ。
そんなヨンホさんと、実は「親せき」だった。
つい先日、親せきとの食事の席にヨンホさんの妹が混じっていたのだ。突然その場で聞いて、あまりに驚き、むせた。
私が映画「洪吉童」の思い出話をし始めると、おもむろにカバンから携帯電話を取り出す、ヨンホさんの妹。「今どこ? 家に着いたの? 今食堂でシアボジ(姑)たちと食事をしているから、来ない? オッパのファンもいるから」。
20分後、さわやかな笑顔の洪吉童が奥さん(この人も映画女優)をともなって現れた。「あっ、洪吉童!」。レストラン内がざわついた。
憧れの洪吉童と酒を酌み交わす。「これからは親せきだから、いつでも誘ってくれよ」。とっても謙虚で優しい人柄に、ますますファンになった。
その日、私たちのテーブルにサービスがたくさん運ばれてきたのは言うまでもない。ほどなくして、レストラン内で撮影会が始まった。従業員も支配人も写真におさまった。(茂)