劇団アランサムセの結成25周年記念公演「ハモニカ長屋のどぶろくブルース」
2013年11月25日 11:43 文化 文化・歴史在日同胞の生き様を表現
劇団アランサムセの結成25周年記念公演「ハモニカ長屋のどぶろくブルース」(脚本=李英哲、演出=金正浩)が、東京・新宿区の劇場タイニイアリスで上演された(10月24~27日)。
劇団アランサムセは、朝鮮半島で祖国統一、反米自主化の機運が盛り上がりを見せていた1988年6月、東京・千代田区の法政大学学生会館大ホールで旗揚げ公演をした後、25年にわたり演劇活動を続けてきた。当初、劇団が掲げた最大のテーマは、「母国語による在日同胞の生き様の表現」だった。当時の朝鮮新報(88年7月1日付)は、「朝鮮学校教員、出版関係者、労働者、日本学校出身者など20人余りの若者たちが、3ヵ月にわたる練習を経て本番を迎えた」と伝えている。初期の作品に多く見られたテーマは祖国統一だったが、時代の変遷と共に在日同胞の暮らしや心の葛藤を描いた作品も上演されるようになった。そして台詞も、朝鮮語、朝・日混用、日本語と変容してきた。
「ハモニカ長屋のどぶろくブルース」は日本語による公演だ。生きるため、子どもたちのお腹を満たすため、社会の底辺で働き、暮らしてきた朝鮮人。とくに女たちは、差別と抑圧が蔓延する日本の地で「どぶろく」の密造販売をしながら必死に家族を守り、生きながらえてきた。一世ハルモニ特有のなんともいえない独特な語りを金民樹(劇団タルオルム)が好演している。「トプロクふーったら、ぱくはっちゅするぞ(ドブロク振ったら爆発するぞ)」「1本だけ、1本だけ持って逃げろ、これなかったらうちら食べていけへん」。この悲痛な叫びと闘いによって、同胞の命は繋がれてきた。
舞台は、過去と現在が錯綜する中、一世から4世へと引き継がれてきた差別と抑圧に対する闘いを描いている。さらに、ヘイトスピーチがはびこる日本で、朝鮮人として「生きたい」「歌いたい」、そして、「奪われ続けた声」を守り、伝えたいと願う孫の琴伊の歌声が鳴り響く。