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【寄稿】遺骨問題の円満な解決を

2012年11月13日 14:57 朝鮮半島

朝・日国交正常化にむけて

今年は朝・日平壌宣言10周年の節目にあたる。この間、さまざまな規制により滞りがちだった日本人の訪朝が最近徐々に増えつつある。朝鮮新報社が発行した旅行ガイドブック「朝鮮魅力の旅」が予想を超えて購読されているというから、この傾向は今後も続くと思われる。

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韓日会談が進められていた1960年代に、日本政府は門戸を固く閉ざし、朝鮮との交流はほとんどなかった。朝・日間の交流がようやく始まるのは70年代に入ってからである。

超党派の国会議員団が初めて朝鮮を訪問するのは71年11月である。以降、徐々にではあるが、与党、野党の政治家の交流が行われた。90年9月には金丸信自民党副総裁が社会党の田辺誠委員長とともに訪朝して朝鮮労働党と会談し、「朝・日関係に関する共同宣言」を採択した。95年3月には渡辺美智雄(元外相)を団長とする自民、社会、さきがけ連立与党代表団が訪朝して朝鮮労働党と「朝・日会談再開のための合意書」を発表した。

この間、個々の政治家や民間の交流が続き、2000年には日朝友好議員連盟が発足した。そして2002年9月、小泉純一郎首相が初めて訪朝し、金正日総書記と会談して植民地支配を謝罪するとともに国交正常化交渉を再開することで一致し、「朝・日平壌宣言」に調印した。

こうして20年の歳月をかけて国交正常化への道が準備されてきた。しかし、せっかく軌道に乗った国交正常化への機運は安倍晋三元首相の出現で一挙に崩された。

拉致問題に対する強硬派ぶりを売り物に総理の座に着いた彼は、「圧力を加えれば北は崩壊する」として、何の効果もない制裁一辺倒政策を強行した。同時に、総聯中央をはじめ各県本部、商工会、科学者協会などに、これでもかこれでもかと弾圧を加え、「万景峰92」号の日本入港禁止を含め二国間の関係を全面的に遮断した。

20万の朝鮮女性の運命を踏みにじった「従軍慰安婦」問題に関しては、米議会下院も人道上の問題として「日本政府の謝罪」を求める決議を採択した。しかし安倍は、「われわれは謝罪するつもりはない」と言い放った(07年3月5日、参院予算委員会)。

悲惨な運命を強要された「従軍慰安婦」にも幸せを夢見た青春があり、帰りを待ちわびる家族がいた。彼は政権を投げ出し無責任な政治家であることを自ら暴露したが、このような冷酷な発言は人倫、道徳の感覚さえ問われるものがある。

平壌宣言は、「不幸な過去を清算し、懸案条項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとの共通の認識を確認した」とし、朝・日国交正常化の基本を明らかにした。

しかし安倍によってつぶされたこの朝・日国交正常化の道は解決の目途もつかないまま、こんにちに至った。

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長らく途絶えていた朝・日政府間交渉が遺骨問題を機に4年ぶりに再開された。もともと朝鮮で死亡した人や第二次大戦前後の混乱期に満州から引揚などの途中に朝鮮で死亡した日本人は、厚生労働省によれば3万4千余人に上る。

日本人の遺骨は平壌をはじめ清津、咸興、興南、定坪など各地にあるが、最近訪朝した墓参団は60余年の歳月を経て家族の墓に花をたむけて合掌し、戦後の混乱の中で日本人死亡者のために墓地を提供した朝鮮当局に謝意を表した。

遺骨の問題は人道上の大切な問題である。米国防省によれば、朝鮮戦争で死亡した米兵の遺骨は約5,500体が残されていいるという。

停戦中の朝米は今なお交戦状態にあるにもかかわらず、朝鮮は米兵の遺骨発掘、収集を認めた。

朝鮮と交戦状態にあるわけでもない日本政府が遺骨問題で「制裁」だの時期尚早だのと人為的な障害を設ける理由は全くない。報道によれば、日本政府は政府間交渉の議題として拉致問題をのせることを要求しているという。遺骨の問題は遺骨の問題として解決すべきであって、拉致の問題を引き入れて事態を複雑にするのは全くの筋違いである。

遺骨問題を円満に解決することは数万の遺族の切なる念願であり、これが糸口となって国交正常化へとつながれば、朝・日両国民の双方の利益にもかなうものである。

(白宗元、歴史学博士)

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