短編小説「燃える島」14/黄健
2022年01月30日 10:18
まず、3番手宛の電文を読み終えると、すぐ次の電文に目を走らせた。 「8時47分…… 中隊長以下全員6名 手榴弾ト自動小銃ヲタズサエ岸辺ヘ向カウ 敵ハ舟艇ヨリ降リテ イッセイニ上陸ヲ開始 岩ノカゲ 爆弾…
短編小説「燃える島」12/黄健
2022年01月24日 07:57
やがて、通路の方から、李大勲中隊長を先頭に、それぞれ自動小銃と手榴弾を手にした中隊員たちの姿が現れた。貞姫は、一人ひとりの顔をじっと見た。中隊長以下全員6名、いずれの顔にもみないつもと少しも変わらぬ闘…
短編小説「燃える島」11/黄健
2022年01月23日 09:46
どうか当たってくれるようにと心に祈るのだが、相手の敵艦は、あたかも野獣の群れのようにうようよしている。マストごとにはためく色とりどりの旗は、世にまたとない醜悪で憎いものに見えた。 ついにわが方の砲弾が…
短編小説「燃える島」11/黄健
2022年01月23日 09:46
どうか当たってくれるようにと心に祈るのだが、相手の敵艦は、あたかも野獣の群れのようにうようよしている。マストごとにはためく色とりどりの旗は、世にまたとない醜悪で憎いものに見えた。 ついにわが方の砲弾が…
短編小説「燃える島」10/黄健
2022年01月21日 07:50
大勲も貞姫もいい知れぬ喜びに目を輝かせていた。 あたりは、しだいに明るくなってきた。敵弾はますます激しくまわりをゆすぶった。しかし二人は、まるで戦争は遠くのことのように、幼い時代のこと、軍隊でのこと、…
短編小説「燃える島」9/黄健
2022年01月19日 06:31
「私を許してください! どうかあなたがたと一緒に最後まで進めるように、正しい道からはずれないように、はげましてください」 貞姫は、自分の考えだけを追いながら、そらんじるように言った。 大勲は、黙って机…
短編小説「燃える島」9/黄健
2022年01月19日 06:31
「私を許してください! どうかあなたがたと一緒に最後まで進めるように、正しい道からはずれないように、はげましてください」 貞姫は、自分の考えだけを追いながら、そらんじるように言った。 大勲は、黙って机…
短編小説「燃える島」8/黄健
2022年01月18日 11:39
彼女は、自分のことよりもいっそう中隊長のことで胸がいっぱいだったのである。やがて大勲が思い出したように、 「きみは……」とゆっくり重い口をひらいた。 「いまからでも、帰ったほうがよくはないか……」 「…
短編小説「燃える島」7/黄健
2022年01月15日 06:21
まだ消えやらぬ白い星かげの下に黒くうねっている仁川の海は、まるで無気味なものに思われた。黒い海面に浮かぶ大小さまざまの艦艇は、海賊の牙城にも似て、ちらちら見えるそのマストや煙突や砲口や船体やらは、殺気…
短編小説「燃える島」6/黄健
2022年01月15日 06:21
「どうか体に気をつけてね」 「私のことは大丈夫、あなた方こそ、途中気をつけてね……」 「ええ、またきっと会いましょうね……」 「がんばって……」 「あなたもがんばって……」 後ろ髪をひかれる思いで去っ…
短編小説「燃える島」5/黄健
2022年01月08日 11:40
二人の仲間にもこの命令を伝えなければならなかったが、それに先立って貞姫は、自分自身わりきれない気持ちに悩まされた。最後のたたかいを前にして、砲中隊の人たちと別れるなどということはついぞ考えてもみなかっ…
短編小説「燃える島」4/黄健
2022年01月02日 06:50
出鼻をくじかれた敵は、上陸をいったん見合わせると、またもや艦砲射撃を開始した。飛行機が真っ黒に空をおおって襲ってきた。それは、島を丸のみにしてしまうかとさえ思われた。 戦闘は、午後の4時近くになっても…
短編小説「燃える島」4/黄健
2022年01月02日 06:50
出鼻をくじかれた敵は、上陸をいったん見合わせると、またもや艦砲射撃を開始した。飛行機が真っ黒に空をおおって襲ってきた。それは、島を丸のみにしてしまうかとさえ思われた。 戦闘は、午後の4時近くになっても…
短編小説「燃える島」3/黄健
2021年12月31日 07:48
ちょうど、砲の修理をしていた中隊長は、急いでこの声の主の視線をたどって岸辺に目をうつした。その目がキラリと光ったかと思うと、彼は何も言わずに塹壕を出て、大股になぎさへ降りていった。砲弾で砕かれた岩のそ…
短編小説「燃える島」2/黄健
2021年12月29日 08:49
砲兵以外の他の兵士たちも、崩れた塹壕を補修したり、偽装したり、それに負傷した戦友の運び出しをしたりで瞬時もじっとしていなかった。まるで、水車の米つきのように、李大勲中隊長を軸として、他の人々は申し分の…
短編小説「燃える島」1/黄健
2021年12月27日 10:30
海軍通信手、安貞姫が年下の二人の同僚とともに新しい任地、月尾島の李大勲海岸砲中隊に向かったのは、1950年9月12日の夜半のことであった。