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〈朝鮮と日本の詩人 64〉鳴海英吉

いつだって平和は疑い深い もう それ以上は 言ってはいけない いつだって 平和は 疑いぶかい 一九四五年四月六日 日本敗戦の年の春 広島廿日市警察署で 一人の朝鮮人が 自殺した 調書では 午後四時半頃…

〈朝鮮と日本の詩人 61〉信夫澄子

君ら一筋に自由な祖国へ 祖国朝鮮へ帰る その姿 〈見送りにきました〉 知る顔なけれど きみらの親を仲間を虐殺した この国に 別れを惜しむことがあろうか 平壤駅の柵ひえびえと ありし日の 日本軍隊の威嚇…

〈朝鮮と日本の詩人 60〉上林猷夫

強くこみ上げてくるもの 私は百貨店の廂の下でバスを待っていた。 省線に跨る陸橋の仮橋。 蒸気ハンマアの地響きが絶えず甲高く落ちてくる。 板囲いに沿ってひっきりなしに人が続いて出たり行ったりごった返して…

〈朝鮮と日本の詩人 59〉西沢隆二

思想犯への拷問の残酷さ 君らは馬のように鞭うたれた 君らは角材の角の上に座らされ 膝には重たい石を抱された   君らは天井から荒縄で吊るされ 身体の形の解らくなるまで擲られたりした 君らは厳…

〈朝鮮と日本の詩人 58〉宮柊二

日本の再軍備 憎み卑しむ 前線に到らむとして半島の道急ぐ武装の兵写されつ ほとほとに歩みあまして嘆くときも暗し朝鮮も暗し はこばれてこし、韓国の徴募兵この高原に鍛はるるとぞ わが国のものにはあらぬ飛行…

〈朝鮮と日本の詩人 57〉秋野さち子

祈りが虹となって その朝 おかっぱのわたしは 三ッ編のおさげの子と門の所で遊んでいた 向うから 先頭の両側に 白地に巴を描いた旗を持ち 冠をつけた白周衣の人達が列をつくり 歩調を整えて進んで来る 音頭…

〈朝鮮と日本の詩人 56〉村松武司

東明王陵への道行きで 高速道路は元山へ 赤土の膚は地平に消え われらもまた地平のなかに沈みつつ。 疾走するボルボの疼き腰を浮かせて 呉委員はしずかに語る 指一本立てるしぐさ 高句麗建国、朱蒙の説話 そ…

〈朝鮮と日本の詩人 55〉土井大助

「人間の手を打って下さい」 人間から生まれた人間のひとりとして 人間から生まれた人間のひとりであるはずの 日本政府の大臣さまがた こんなことがあってもいいのでしょうか