〈朝鮮と日本の詩人 94〉長谷川龍生
2009年06月08日 00:00
安重根義士を称えて だれか知らない人間が 立ったまま仮眠のまどろみの中に 一つの駅を発見する。 それは植民地の駅。侵略計画の駅。明治四二年十月二十六日朝はやく はるか灰色の地平線の見えるハルピンの駅頭…
〈朝鮮と日本の詩人 91〉盤城葦彦
2009年05月18日 00:00
いまも許してはいない 一衣帯水の国じゃないか 少しばかり海を隔てているだけだろう 一足飛びで着いてしまうよ 知人は たやすく 安易に言うが (2連12行略)
〈朝鮮と日本の詩人 90〉中村稔
2009年05月11日 00:00
高麗青磁の神秘な青さ 薄命の海をながれる藍よりも さらに淡い器物の青に ひたすらに一日の憂悶を鎖す。 わが祖父たちの奪ったもの、 わが兄弟たちの掠めたもの、 ついに奪いえず、掠めえなかっ…
〈朝鮮と日本の詩人 89〉大岡信
2009年04月27日 00:00
「かくもデブチンになり」 信じられない話だ 長年ヤマトに巣食っていた 貧乏神の大群が 足早に去った春景色 テレビジョンが映し出す 新聞雑誌が報道する もうあたりまえという顔をして
〈朝鮮と日本の詩人 88〉鹿地亘
2009年04月20日 00:00
死をも恐れぬ強靭な愛国心 おおそれは私を泣かせる、 このわかものを見よ! ぐるぐる巻きに柱にゆわえられ 的のしるしを胸にさげ、 眼かくしの下に、眼に見えぬ天を仰ぎ、 少女のような無心の唇をほころばせ、…
〈朝鮮と日本の詩人 87〉河津聖恵
2009年04月06日 00:00
「この冬、あなたをふかく知った」 加茂大橋の欄干にもたれ 夏の北山をのぞむ (白い闇を抱え)私は帽子をまぶかに 〝死ぬ日まで天を仰ぎ〟と呟く小さな人になる(誰もみない) 遠近法よ 揺らげ. (緑は故郷…
〈朝鮮と日本の詩人 86〉内田博
2009年03月30日 00:00
祖国愛は火となって あの朝鮮のこどもらは わずかな焚火や食料を背にして 折れるほど腰を曲げて 泥濘のみちを追われていた。 住家も樹々も焼けただれた祖国を まるで野良犬のように追われていた。 あのくらい…
〈朝鮮と日本の詩人 85〉松田解子
2009年03月23日 00:00
ああよい民族 ああよい国朝鮮 鉈豆袖の朝鮮乙女が 胸をおどらせる くねる乙女の全身に にくしみはゆすぶられ つらみはとかされ なつかしみはあふれてくる ああよい民族 よい国朝鮮 鉈豆形の袖から すきと…