公式アカウント

〈朝鮮と日本の詩人 94〉長谷川龍生

安重根義士を称えて だれか知らない人間が 立ったまま仮眠のまどろみの中に 一つの駅を発見する。 それは植民地の駅。侵略計画の駅。明治四二年十月二十六日朝はやく はるか灰色の地平線の見えるハルピンの駅頭…

〈朝鮮と日本の詩人 91〉盤城葦彦

いまも許してはいない 一衣帯水の国じゃないか 少しばかり海を隔てているだけだろう 一足飛びで着いてしまうよ 知人は たやすく 安易に言うが (2連12行略)

〈朝鮮と日本の詩人 90〉中村稔

高麗青磁の神秘な青さ 薄命の海をながれる藍よりも さらに淡い器物の青に ひたすらに一日の憂悶を鎖す。   わが祖父たちの奪ったもの、 わが兄弟たちの掠めたもの、 ついに奪いえず、掠めえなかっ…

〈朝鮮と日本の詩人 89〉大岡信

「かくもデブチンになり」 信じられない話だ 長年ヤマトに巣食っていた 貧乏神の大群が 足早に去った春景色 テレビジョンが映し出す 新聞雑誌が報道する もうあたりまえという顔をして  

〈朝鮮と日本の詩人 88〉鹿地亘

死をも恐れぬ強靭な愛国心 おおそれは私を泣かせる、 このわかものを見よ! ぐるぐる巻きに柱にゆわえられ 的のしるしを胸にさげ、 眼かくしの下に、眼に見えぬ天を仰ぎ、 少女のような無心の唇をほころばせ、…

〈朝鮮と日本の詩人 87〉河津聖恵

「この冬、あなたをふかく知った」 加茂大橋の欄干にもたれ 夏の北山をのぞむ (白い闇を抱え)私は帽子をまぶかに 〝死ぬ日まで天を仰ぎ〟と呟く小さな人になる(誰もみない) 遠近法よ 揺らげ. (緑は故郷…

〈朝鮮と日本の詩人 86〉内田博

祖国愛は火となって あの朝鮮のこどもらは わずかな焚火や食料を背にして 折れるほど腰を曲げて 泥濘のみちを追われていた。 住家も樹々も焼けただれた祖国を まるで野良犬のように追われていた。 あのくらい…

〈朝鮮と日本の詩人 85〉松田解子

ああよい民族 ああよい国朝鮮 鉈豆袖の朝鮮乙女が 胸をおどらせる くねる乙女の全身に にくしみはゆすぶられ つらみはとかされ なつかしみはあふれてくる ああよい民族 よい国朝鮮 鉈豆形の袖から すきと…