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〈朝鮮と日本の詩人 13〉大江満雄

ぼく達 雪の桑畠で鉄砲うった 朝鮮労働者とぼくが身震いしたのだ 話し合い とけ合い胸んなかをふるわす こ奴は鉄砲だ 赤城 榛名 妙義 浅間が見える 涙ってやつは感情の火薬だ 相手の男はぐいぐい歩いて行…

〈朝鮮と日本の詩人 10〉佐藤惣之助

青き大同江のほとりに立ちて 何ごとと知らず涙そそぐは いかなる旅人のならわしぞ 大同門外 数尺の月によづべくもなく 秋風しろき乙密台のあたり さんさんたる星のみかがやける まこと幼子の如くあざらけく …

〈朝鮮と日本の詩人 9〉白鳥省吾

峠を越えてくる若者に遇った 八月の日は熱く 落葉松に鶯の啼く峠を 喘ぎ喘ぎ登ってくる紺の法被姿は 日本の労働者そっくりであるが 道をきいたそのアクセントに 異邦人の響きがある  

〈朝鮮と日本の詩人 8〉中原中也

朝鮮女の服の紐 秋の風にや縒れたらん 街道を往くおりおりは 子供の手をば無理に引き 額顰めし汝が面ぞ 肌赤銅の乾物にて なにを思えるその顔ぞ -まことやわれもうらぶれし こころに呆け見いたりけん. .…

〈朝鮮と日本の詩人 7〉丸山薫

「いつ頃か、姫は走っていた。姫のうしろを魔物がけんめいに追っていた。彼女は逃げながら髪に挿した櫛を抜いてほうった。櫛は魔物との間に、突兀として三角の山になった。魔物はその山の陰にかくれた。そのまま姫は…

〈朝鮮と日本の詩人 6〉三好達治

望の夜の月をまちがて いにしへの百済の王が 江にのぞみ山にむかひて うたげせし高どのの名は この丘のうへにのこりて 秋されば秋の雨ふり そばの花をりしも白き 畑なかにふるき瓦を ひろはんとわがもとほり…

〈朝鮮と日本の詩人 5〉高村光太郎

峯から峯へボウが響いて 大穴の飯場はもう空だ。 山と山とが迫れば谷になる。 谷のつきあたりはいつでも厖大な分水嶺の容積だ。 トンネルはまだ開かない。 二千人の朝鮮人は何処にいる。 土合、湯桧曽のかまぼ…

〈朝鮮と日本の詩人 4〉室生犀星

白い高麗の香合が一つと その他には何も置いてない いまは立春に近いときで のどかな光は障子のそとに流れている その障子の外に 金網の長い鳥籠がかかり 閑寂な小鳥が止まり木をたたいている