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〈歴史×状況×言葉 9〉金子文子/「飽くまで自由の念に燃えよ」

昨年、児童虐待の相談件数が過去最高を更新したという。件数は大きく減少する様子もなく、最近も親により児童が死に至るような凄惨な事件が報じられた。根本的な解決に向けた対策や展望が容易にはつかめない、ゆがみ…

〈歴史×状況×言葉 6〉芥川龍之介(上)/野蛮な「桃太郎」と日本軍国主義と

日本で生まれ育った者ならば誰でも知っているであろう桃太郎物語。最も有名なこの「昔話」、今日定着しているストーリーとして成立し普及されたのは、そう遠い昔ではなく、実は近代以降のことである。物語成立事情を…

〈歴史×状況×言葉 5〉有島武郎/「行け。勇んで。小さき者よ」

有島武郎(1878~1923)に出会ったのは、高校1年生の頃、教科書に収録されていた「小さき者へ」(1918)だった。病で母親を亡くした3人の幼い子どもたちに向けて書かれた作品である。厳粛な文体が、高…

〈歴史×状況×言葉 4〉高浜虚子/憐れまれる存在ではない

「韓国併合条約」の翌1911年、高浜虚子(俳人、小説家 1874~1959)は二度にわたり朝鮮に遊んだ見聞をもとに長編小説「朝鮮」(「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」の両紙に連載)を書いた。俳人として、…

〈歴史×状況×言葉 3〉夏目漱石(下)/「植民地」の存在 忘却へ追う

「己みたような腰弁は殺されちゃ厭だが、伊藤さんみたような人は、哈爾賓へ行って殺される方がいいんだよ」「伊藤さんは殺されたから、歴史的に偉い人になれるのさ」-夏目漱石の小説「門」の宗助は、伊藤博文殺害の…

〈歴史×状況×言葉 2〉夏目漱石(上)/帝国日本の心象地理を刻印

「どうして、まあ殺されたんでしょう」-文豪・夏目漱石(1867~1916)の小説「門」(1910年「韓国併合条約」締結直前の時期に連載)の一幕、主人公宗助の妻お米の台詞である。伊藤博文射殺の報に驚いた…

〈歴史×状況×言葉 1〉石川啄木/「時代閉塞の現状」

時代閉塞の現状を奈何にせむ秋に入りてことに斯く思ふかな 地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつゝ秋風を聴く 石川啄木(1886~1912、歌人、詩人、小説家、評論家)は、1910年「韓国併合条約」締結直…