
〈歴史×状況×言葉 33〉秋田雨雀
2013年08月10日 12:16
自然人をころし 人人をころす―関東大震災時の朝鮮人虐殺に際し、作家秋田雨雀はこううたった。それからちょうど90年を迎える今日、とりわけ「3.11」後の日本社会の状況を生きている私たちは、あらためて戦慄…

〈歴史×状況×言葉 30〉中野重治(3)/「友情」「連帯」で覆われた加害の歴史
2013年03月11日 10:55
「彼らが私を、やはり兵隊から歸つて行く一人の日本人として、しかし信用していゝ人間として見てくれたことをその時もよろこび今もよろこんでいる」(傍線筆者)―中野重治は「四人の志願兵」において、敗戦直後、故…

〈歴史×状況×言葉 29〉中野重治(2)/「8.15」とらえる「日本人」のねじれ
2013年02月04日 15:17
日本敗戦/朝鮮解放直後の状況下、日本の進歩的知識人中野重治と朝鮮人青年との心の交流を点描した「四人の志願兵」(「民主朝鮮」第9号、1947年3・4月)は、戦争と軍国支配からの「解放」感情の共有のもと、…

〈歴史×状況×言葉 28〉中野重治(1)/「8.15」描く文学を朝鮮人の視点で見つめ直す
2013年02月01日 12:57
集英社創業85周年記念企画として、昨年より順次刊行されている「戦争×文学」シリーズ。戦争をめぐる文学作品を題材としているだけあって、アジアそして朝鮮にふれた作品も多く収録されており、いずれ本連載でも収…

〈歴史×状況×言葉 27〉谷崎潤一郎/植民地主義的な「美意識」によって
2012年11月19日 15:51
文豪・谷崎潤一郎は、1918年、中国旅行のため朝鮮を経由したが、一週間足らずの朝鮮滞在について「朝鮮雑観」という小文を書いた。 はじめに到着した釜山の朝の印象は、「飽くまでも青く青く澄んで透き徹ってい…

〈歴史×状況×言葉 26〉中西伊之助/虚偽に満ちた「『不逞』のイメージ」
2012年10月06日 11:21
日本の近隣諸国、とりわけ中国での反日行動が連日マスコミで取り沙汰された。中国側の「理不尽」で過激な「暴動」という表象がセンセーショナルに繰り返され、それへの嘲笑と敵意そして恐怖を交えたイメージを再生産…

〈歴史×状況×言葉 25〉志賀直哉(下)/「暗夜」をさらに暗くする同情
2012年07月02日 15:11
公開中の映画「道―白磁の人―」を見た。植民地期朝鮮の植林事業と、朝鮮芸術、とくに白磁の美の発見と保存に尽くした浅川巧を描いた本作は、江宮隆之氏の原作小説をもとにしながらも、関東大震災時朝鮮人虐殺に関す…

〈歴史×状況×言葉 24〉志賀直哉(上)/閉じられた自我のあり方を探る
2012年05月28日 14:15
文豪志賀直哉の唯一の長編「暗夜行路」には、植民地支配期の朝鮮、朝鮮人に関する興味深い挿話が見える。主人公の時任謙作は作中でお栄を迎えに朝鮮を訪れる。彼女はかつて祖父の妾であり、母ほども歳は離れていたが…