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短編小説「伜は前線でたたかっている」14/李相鉉

爺さんは腹の中でフフンと笑った。彼にとっては何よりも、米を掘りだして運ぶ時間を少しの狂いもなく予定どおりにすすめることだけが頭に一杯であった。 「それはどうも…。で、さっきのお米の話は…?」

短編小説「伜は前線でたたかっている」13/李相鉉

「あのあほうが、もう二度と奴のいうことなんかとりあうな!」 許振風はもったいぶって咳ばらいをすると、あぐらをかいてふんぞりかえった。

短編小説「伜は前線でたたかっている」12/李相鉉

将校たちは、「扇岩」のところに工作員を派遣して、そこにのこっている自分たちの連れと交替してもらえないかと頼みながら、そのとき彼らの道案内をしてくれた老人にいたく感謝しているというのであった。甲徳はその…

短編小説「伜は前線でたたかっている」11/李相鉉

コプニは吐きだすようにそういうと、あたりを見回した。 ちょうど峠道を下りてくる萬基爺さんの姿をみとめたコプニは、水がめを頭にのせるとみんなの先に立った。

短編小説「伜は前線でたたかっている」10/李相鉉

つづけて彼は、自分のいまの立場をごく手短かに話した。やっと安心したのか、くだんの将校は、渭原方面にぬける道をこまごまとたずねはじめた。

短編小説「伜は前線でたたかっている」9/李相鉉

「わしは…」 「つべこべいわないで、さっさと行った!」

短編小説「伜は前線でたたかっている」8/李相鉉

「萬基爺さんはこの村の生き字引だぞ、だまそうたってだめだ」 許振風が威丈高にそういうと、渭原家の家内が目に涙をためて萬基爺さんに詰め寄った。すると許振風が彼女をつきとばした。

短編小説「伜は前線でたたかっている」7/李相鉉

「爺さん、何をそう考えこんでいる!今日はひとつ、わしと一緒にめぼしい家を片っぱしから探してまわろう」 許振風は目を細めてそういうと、懐からアメリカ製の煙草をとりだした。彼はここらで自分の手なみのほどを…

短編小説「伜は前線でたたかっている」6/李相鉉

爺さんは、彼らがそこで後退するわが方の人員をまち伏せするつもりだということをすぐによみとった。この地方で一生暮らしてきた彼には、このあたりの地形は目をつぶってもはっきりと頭にうかんだ。

短編小説「伜は前線でたたかっている」5/李相鉉

人びとの悲鳴が爺さんの胸を突き刺した。 彼はチゲをかついだまま、嫁と一緒に松の木に身をかくして下の方を見下ろした。「ちよんまげ」の息子が、一人の村民の胸ぐらをつかんで引っ立てていくところであった。 ―…