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短編小説「春の農村にやってきた青年」9/千世鳳

「ふーん、この人は、今の党の政策もよく知らんとみえるな」 「いったい、どういう意味なんですか? それは」 「きみ、冷床苗をするってことはだ、党の政策を実際にやるってことだよ。それなのに、冷床苗をほっぽ…

短編小説「春の農村にやってきた青年」8/千世鳳

「おれがかい? おれにゃ、とてもそんな器用なまねはできねえさ」 これを聞いたチベギは、声を出して笑った。 「そうじゃないんですよ。おじさん! 手っ取りばやいってのはね、なんのことはない、はじめっからモ…

短編小説「春の農村にやってきた青年」7/千世鳳

チベギは、今までこらえていたものが爆発して、おのずと声が大きくなり額には血がのぼってきた。 「そんなら、おまえさんがじかに当たってみなよ。管理委員会に虎がいるわけじゃあるめえし……そんだけの腕を持って…

短編小説「春の農村にやってきた青年」6/千世鳳

「そうでさあ、そんな高いものをこんなちっぽけな鍛冶屋に据えつけて風をおこすなんて……」 「はっはは、組合がどうなろうと、てまえさえ楽ならいいんだろう。そして、技術者でございますということにもなるしな……

短編小説「春の農村にやってきた青年」5/千世鳳

彼は、キルスがこの先、自分を大いに困らせやしないかとそんなことまで心配になってきた。 次の日から彼は、なおさらいかめしい顔つきをしてキルスにこごとを言った。最初からしっかりと手綱をひきしめておくつもり…

短編小説「春の農村にやってきた青年」4/千世鳳

「おじさん! そのハンマーの仕事も、だんだん機械化する必要がありますね」 「おい、おい、おまえの言う通りだったら、世の中のことは、なんでも寝転んでできちまう」 「おじさんは、今年の課題の中で、なにがい…

短編小説「春の農村にやってきた青年」3/千世鳳

キルスは力を込めてふいごを押した。炉の中につめてある炭の間から、青い炎がヘビの舌のようにチロチロと勢いよく燃え上がった。その炎はふいごを押したり引いたりするたびごとに、燃え上がったり消えたりする。おや…

短編小説「春の農村にやってきた青年」2/千世鳳

二人は東洋拓殖会社の土地の小作をして生計を立てていたが、ドックンもヒョンボも鼻っぱしが強かったので、毎年秋になると、まっ先に小作料のことで会社と争った。そして二人はいつも会社の係員のえりがみをつかんだ…

短編小説「春の農村にやってきた青年」1/千世鳳

ムン・キルスは早目に朝食をすませて家を出た。組合に来て初めて作業につく日である。ひとりでに胸がふくらんでくるように思った。 ………鍛冶屋というのは、どのくらいの大きさだろう? 何人ぐらいいるのだろう?…

短編小説「幸福」28/石潤基

彼らは去年の秋、正式に結婚式を挙げた。党大会に参加することになった郡党委員長と僕のために、わざわざ日延べまでして日取りを決めたのだが、折悪しく大会に続いて学会が開かれたために、僕はとうとう参加できなか…