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短編小説「燃える島」4/黄健

出鼻をくじかれた敵は、上陸をいったん見合わせると、またもや艦砲射撃を開始した。飛行機が真っ黒に空をおおって襲ってきた。それは、島を丸のみにしてしまうかとさえ思われた。 戦闘は、午後の4時近くになっても…

短編小説「燃える島」4/黄健

出鼻をくじかれた敵は、上陸をいったん見合わせると、またもや艦砲射撃を開始した。飛行機が真っ黒に空をおおって襲ってきた。それは、島を丸のみにしてしまうかとさえ思われた。 戦闘は、午後の4時近くになっても…

短編小説「燃える島」3/黄健

ちょうど、砲の修理をしていた中隊長は、急いでこの声の主の視線をたどって岸辺に目をうつした。その目がキラリと光ったかと思うと、彼は何も言わずに塹壕を出て、大股になぎさへ降りていった。砲弾で砕かれた岩のそ…

短編小説「燃える島」2/黄健

砲兵以外の他の兵士たちも、崩れた塹壕を補修したり、偽装したり、それに負傷した戦友の運び出しをしたりで瞬時もじっとしていなかった。まるで、水車の米つきのように、李大勲中隊長を軸として、他の人々は申し分の…

短編小説「燃える島」1/黄健

海軍通信手、安貞姫が年下の二人の同僚とともに新しい任地、月尾島の李大勲海岸砲中隊に向かったのは、1950年9月12日の夜半のことであった。

短編小説「春の農村にやってきた青年」24/千世鳳

「まあ、いいから、靴下をくれ!」 「本当に、じいさんの言うことを聞いてると、とても正気だとは思えやしないよ! バルバリってどこのバルバリさ」 妻は靴下を持ってきたが、夫がどうかしてるのではないか確かめ…

短編小説「春の農村にやってきた青年」23/千世鳳

「そうしたら、何て言ってました?」 「いまおまえさんがもらっている点数でも高すぎるとよ」 「な、なんだって? いまの点数でも高すぎる?」 おやじは返事もせず、真鍮の器に盛ったごはんにお湯をかけてさらさ…

短編小説「春の農村にやってきた青年」22/千世鳳

「ハハハ、もう威張る話はやめにして、いっちょう、相撲でも取るか!」 トラクター手は、眉毛の濃い丸顔のキルスが頼もしく立ち上ると、その首をしっかり抱いた。居合わせた組合の人々の間から笑い声が起こった。二…

短編小説「春の農村にやってきた青年」21/千世鳳

キルスは、胸に腕組みした指をぱたぱたはじきながら考えた。彼の澄んだ瞳には涙さえ浮かんでいた。 しばらくしてから、おやじがものも言わずにもっそりと戻ってきた。先ほどとは違って、思いなしか、多少、顔色もや…

短編小説「春の農村にやってきた青年」20/千世鳳

「収入ですって? 収入が多いか少ないかってことなんか、そう気にしていませんよ。この組合の去年の分配実績を見ると、相当の分配をしてましたが、機械工場に劣るようなことはないでしょうよ」 「でも、技術者は、…